急激に変わりすぎると、ユーザーに受け入れられないことも多い
アッと驚く複雑怪奇な佇まいが話題騒然に
次は、2015年登場の4代目(先代)トヨタ・プリウスです。「ICONIC Human-tech」をコンセプトとしたエクステリアは、初採用したTNGAによる低重心と、人の直感を起点としたデザインを標榜。
もともとこの時期のトヨタは、「より特徴のある」デザインを目指していましたが、さらに当時の豊田章男社長による「ワオ!」なクルマとの号令もあって、勢いデザイン部門の肩に力が入ってしまったのも頷けます。結果、ルーフのピークを前方に移した異様なシルエットや、ランプ類など複雑怪奇なディテールを持つに至ったのです。
さらに、落ち着かないインテリアや、街の風景から浮いた「サーモテクトライムグリーン」のボディ色など、不人気車の要素はいくらでもありましたが、じつは販売状況はそれほど悪くなかったのです。もちろん、買い換え需要の母数が大きいこともありますが、専門家が言うほどユーザーは嫌っていなかったのかもしれません。その意味でまさに賛否両論のクルマと言えそうです。
見慣れないものを拒否するのは世界共通?
次はちょっと目先を変えて輸入車から、2001年発売の4代目BMW7シリーズを取り上げます。ご存じのとおり、この4代目は奇才クリス・バングルが同社で初めて手掛けた市販車として話題になりました。
眉毛のようなターンランプを持った変形2眼タイプのフロントランプ、深く刻まれた水平のキャラクターライン、後に「バングル・バット」と呼ばれた特徴的なトランクリッド等々。フィアット時代にクーペフィアットを手がけた氏らしい大胆なデザインは、意外に保守的なBMWユーザーから大きな反発を受けました。
しかし、表層に止まらずボディ構造からリ・デザインを行う氏のデザインは、時間的耐性を持ち、いま見ても古さを感じさせないばかりか、現在のBMWにも大きな影響を与えていることがわかります。
それを考えれば、「バングルはライバルメーカーが送り込んだスパイだ!」といった当時の声は、いささかヒステリックだったようです。
いいクルマが売れるとは限らないって本当?
さて、1台くらいは現行車からということで、最後にホンダのフィットを取り上げたいと思います。
2020年に4代目として登場した現行型は「心地よさ」をコンセプトに、現在のシンプルなホンダデザインの先駆けとして、じつにクリーンなボディに変身しました。ところが、いまひとつ伸び悩む販売状況に対し、一部の評論家筋からは、このスタイリングが「地味過ぎる」との指摘があがっているのです。
個人的には、ホームやネスといった5種類ものグレード構成が極めてわかりにくく、スタートでつまづいたことが大きいと思っています。これは現行ステップワゴンのエア同様、商品企画の失敗です。いやいや、オラオラ顔が全盛のいま、柴犬をイメージしたスタイルなどウケる筈がない、という話が真実なら何とも残念ではありますが……。
さて、以上賛否両論の5台はいかがでしたか? クルマは4年も5年もかけて開発するものですから、当然熟慮を尽くしている筈。が、それでも常に賛否があるのですから本当に難しいプロダクトです。だからこそ面白いとも言えるのですが……。