馬に乗ったことでクルマへの興味がさらに深くなった
48歳のとき、縁があって乗馬を始めた。乗馬を始めてみると、馬は、自転車やバイクよりクルマに近い感触であることを知った。騎乗姿は2輪車風だが、馬は4つ足動物である。4輪車に近い乗馬感覚は、当然に思えた。
右まわりと左まわりで足の運びが異なり、それに合わせて馬に指示を与え操らなければならない。ハンドル操作と同じだ。障害飛越の競技は、まるでジムカーナのようだ。いや、ジムカーナのほうがあとから考えられたはずだ。4000年の歴史を持つ馬での障害飛越のほうが、先に生まれた競技に違いない。
エンジン自動車の祖とされる、カール・ベンツのパテント・モートルヴァーゲンは、前輪が1輪の3輪車だった。それはベンツがコーナリングを重視していた証だ。当時は、アッカーマン・ジャントーという前輪操舵の手法が世になく、内輪と外輪で操舵角度が異なり、滑らかに旋回させる術がなかったからだ。そこにこだわったベンツの思考は、馬の右まわりと左まわりで足の運びが異なるという、馬の駈歩(かけあし)の仕方があったからではないか? というのが、私の考察だ。その点で、ゴットリープ・ダイムラーよりベンツのほうが、単にエンジンを利用するだけでない、クルマの運動特性まで考慮した凄さだと思っている。
乗馬は奥が深い。
そのうえでのクルマ、そしてエンジンからモーターへ駆動が移る技術的変化や、環境適合、自動運転などなど、クルマへの興味は尽きないのである。