装備の充実で2010年代以降のクルマは高くなった
1981年当時の2代目スターレット(パブリカの発展型)は、3ドアXLが85万2000円だから、いまの価値に換算すると約161万円だ。以上のように、1961年当時のパブリカは、いまなら約564万円だったのに、1971年には約210万円に下がり、1981年は約161万円となった。
一方、いまの所得は20年前と大差なく、25年ほど前に比べるとむしろ下がっている。今の状況に比べると1960〜1980年代は、クルマを始めとする商品が、年を追うごとに値下げしていく感覚があった。物欲が急速に満たされる夢のような時代であった。
以上の経緯を踏まえると、昨今の国民車も「家族4名が快適に乗車できて、荷物も積みやすく、価格を160〜200万円に設定したクルマ」になる。
いまから約15年前の2008年頃は、この定義に当てはまる国民車があった。10代目カローラアクシオGは153万6000円、初代ノート15Gは157万5000円だから、おおむね160万円だ。
200万円前後には、ミニバンの2代目ノアXが203万7000円、3代目ステップワゴンGが213万1500円で用意された。160〜200万円はまさに「国民車」の価格帯であった。
ところがいまは、安全装備と運転支援機能の充実、消費増税、原材料費の高騰などによってクルマが値上げされた。160〜200万円で購入できる車種は、軽自動車とコンパクトカーが中心だ。
背の高い軽自動車であれば、新型ホンダN-BOXの標準グレード(164万8900円)が筆頭に挙がる。背の高いコンパクトカーなら、スズキ・ソリオハイブリッドMX(192万1700円)がベストだ。ライバル車のトヨタ・ルーミーは、走行安定性、乗り心地、後席の座り心地などに不満があって推奨できない。
人気のカテゴリーとされるSUVでは、トヨタ・ライズにノーマルエンジンを搭載した1.2G(186万7000円)、ヤリスクロスにノーマルエンジンを搭載する1.5G(202万円)などが実用的だ。いずれもコンパクトSUVだから、後席は少々狭いが、長距離の移動でなければ大人4名の乗車も可能とする。
コンパクトカーでは、ホンダ・フィットにノーマルエンジンを搭載するホーム(186万3400円)も国民車に入る。全長を4m以内に抑えながら、広い後席を備えることが特徴だ。
それにしても、ボディはコンパクトで運転しやすく、車内は広くて居住性が快適で、価格が160〜200万円の国民車は大幅に減った。背の高い軽自動車と、少数のコンパクトカーやコンパクトSUVに限られてしまう。