この記事をまとめると
■コロナ禍もあってクルマの世界ではさまざまなジャンルでリモート化が加速した
■とくに販売面では、無人のショールームの開設やオンラインによる商談も可能になった
■クルマは車検や修理など人と関わることが必須なので完全リモート化は不可能だろう
クルマ業界における完全リモート化は難しい
家電製品では、さまざまなメーカーの商品を大量に扱う量販店が増えている。インターネットで注文して、自宅まで届けられるサービスも普及した。
ところがクルマの販売方法は、基本的に昔から変わっていない。軽自動車では、修理工場などに併設された複数メーカーの車種を扱う「業販店」も見られるが、小型/普通車はメーカー別に区分された専門店で扱う。とくに都市部では、軽自動車も専門店で販売されることが多く、業販店はあまり普及していない。
その一方で、クルマを販売せずに、展示のみを行う無人のショールームも試みられている。スタッフをあえて配置せず、来店者にクルマを気兼ねなく見てもらうのが狙いだ。
輸入車を中心に、自宅にいながらセールススタッフと商談できる「リモート商談」も行われている。会議ソフトの「Zoom」を使い、ウェブカメラを介して、パソコンやスマートフォンでセールススタッフと面会する。顧客がクルマについて説明を聞きたいときは、販売店にいるセールススタッフがカメラを持って移動して、展示車のインパネなどを映しながら装備等の解説を行う。顧客は自宅にいるから、シートの座り心地などはわからないが、実車を使ってひととおりの説明を受けることは可能だ。
いまは電子印鑑もあり、セキュリティシステムの整ったものであれば、契約書などにも実際に使われている。これらを駆使して郵送も利用すれば、販売店を一度も訪れず、セールススタッフとも直接面会しないでクルマの購入契約をすることも可能だ。納車についても、販売店のスタッフに車両を自宅まで届けてもらえば、顧客は一切外出しなくてもクルマを買える。
トヨタが運営する定額制カーリースのKINTOも、商談はリモートで行える。カーリースと購入は異なるから、オンラインによる契約もしやすい。しかしKINTOの納車場所は、メンテナンスなどを担当する販売店のみだ。最後の段階で、顧客が自ら販売店を訪問する仕組みになっている。
この点についてトヨタの販売店に尋ねると、以下のように返答された。
「いまなら車両販売のすべてをオンラインで行うことも可能だ。しかしお客様には、スタッフと面会して話をしたり、販売店の様子を知って欲しい。どこかで一度は、販売店を見ていただきたいから、納車のときには来店していただく」。
クルマは家電製品と異なり、車検や点検がある。大量のリコールが発生すれば、ユーザーが販売店まで自分で車両を運ぶことも考えられる。万一事故を発生させたときは、ユーザーが自分で積極的に問題を解決せねばならない。破損した自分の車両を販売店まで運び、修理や保険に関する打ち合わせをすることもあるだろう。
このように、クルマを使っていると、家電製品とは異なり、不測の事態が発生することもある。そのときは、販売店やそのスタッフとの協力関係が重要になる。ある程度のリモート化は進められるが、最終的には担当セールススタッフと直接面会したり、販売店の様子を知っておく必要があるわけだ。今後、オンラインやリモートの活用が進むが、すべてを面会や外出せずに片付けることはできない。