この中身が「デルタHFインテグラーレ」ってマジか! 「激軽」でデルタよりも高性能だった「ハイエナ・ザガート」の正体とは (2/2ページ)

見た目だけでなく運動性能もデルタHFインテグラーレを上まわる

 たとえばボンネットフードや前後のバンパーはFRP製に。そのほかのボディパネルはオールアルミ製となり、ベースとなったデルタと比較して、じつに150kgもの軽量化が施されていたのだ。

 キャビンはAピラーをはじめフルカーボン製で、こちらもその17kgもの重量があったデルタのダッシュボードが、わずかに2.5kgとなるなど、そのストイックな軽量化はハイエナの大きな特長だった。

 ボディデザインは、斬新さのなかにもランチアの伝統を感じさせるノスタルジックな雰囲気が醸し出されている。かつてザガートが製作したランチアのフルビア・スポルト・ザガートやアッピア・ザガートをも彷彿させるボディワークは、完全にベースとなったデルタとは異なるシルエットとなった。

 フロントエンドにはクラッシックなランチア・グリルが装着されているが、こちらもボディと同色とすることで、ハイエナのスポーティなキャラクターを引き立てている。グリルの右側にはそれがランチアの作をベースとしていることを示す「HF」のロゴが、またボディサイドにはザガートのトレードマークである「Z」のエンブレムが取り付けられている。「Hyena」のエンブレムはリヤホイール横の下部にそれを見ることが可能だ。

 ハイエナのメカニズムは、基本的にはデルタHFインテグラーレのそれと同様。ホイールベースが短縮されたことは前で触れたが、ほかには前後のマクファーソン式ストラットのサスペンション、搭載される2リッターの直列4気筒ターボをギャレット製のT3型ターボに変更したほか、空冷式インタークーラーの大型化、さらには点火やインジェクションタイミング、ターボプレッシャーなどの見直しによって、最高出力をベースの210馬力から250馬力にまで向上させることに成功していた。

 ハイエナ・ザガートは、残念ながら75台のすべてを生産することなく、25台ほどが完成されたのみでその生産が終了したが、そのスポーティなデザインに敬意を表して名づけられたというハイエナの名は、これからもカーエンスージアストの間で忘れられることはないだろう。


山崎元裕 YAMAZAKI MOTOHIRO

AJAJ(日本自動車ジャーナリスト協会)会員 /WCOTY(世界カーオブザイヤー)選考委員/ボッシュ・CDR(クラッシュ・データー・リトリーバル)

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ
趣味
突然思いついて出かける「乗り鉄」
好きな有名人
蛯原友里

新着情報