この記事をまとめると
■トヨタの2023年3月期第1四半期決算で営業利益1兆円超えを果たした
■営業利益1兆円超の達成は半導体需給の改善や生産性向上活動による販売台数の増加が要因
■ユーザーは待ちわびている新車が少しでも早く納車されることを願っている
前年同期比200%の営業利益を叩き出したトヨタ
トヨタが、日本企業初の1兆円越え。これは、トヨタが2023年8月1日に公表した、2024年3月期 第1四半期決算での営業利益のことだ。前年同期の5786億円から、1兆1209億円と倍増した。営業収益では、10兆5468億円で、前年同期から2兆557億円増えた。
トヨタが今回の決算時に示した業績好調の背景について、次のように説明している。
「長らく続いた半導体需給の改善に加えて、仕入先と一緒に進めてきた生産性向上活動により、すべての地域で前年同期から販売台数が増加した」。
「半導体不足の改善」とは、2020年からのコロナ禍でグローバルで経済活動が急速に冷え込んだ影響で、自動車の各種技術に欠かせない半導体の供給バランスが大きく崩れた状況を、トヨタの努力によって改善したという意味である。
半導体のみならず、コロナ禍で需給バランスが崩れた自動車関連部品は数多くあり、これらに対して代替品の活用や、納入方法などをトヨタは仕入先や関連企業とともに抜本的に見直したのだ。
こうしたトヨタの復調、そして業績の好調を聞いて、ユーザー目線ではどう感じるのか。
「未だに納期がかなり長いモデルがあるのに、収益はしっかり上がっているんだな?」と感じる人もいるだろう。または、新車販売のほかにもトヨタは大きな収益源となる事業があるのだろうか、という発想を持つ人もいるかもしれない。
だが、トヨタの決算資料を見る限り、トヨタの事業の中心は自動車の製造業であり、その多くが乗用車で占められている。そのため、ユーザーが思う「長納期とのイメージのギャップ」は、過去のオーダー分が段階的に生産できる状況となり、その収益がトヨタにまわってきていると考えるのが自然だろう。
また、視点を変えると別の発想もできる。それが、「製販分離」だ。製販分離とは、その名のとおり、製造と販売が分かれているという意味だ。
トヨタに限らず、ほぼすべての自動車メーカーの事業体系は、新車の製造および卸売り販売である。実際にユーザーが新車を購入するのはトヨタからではなく、トヨタの新車を取り扱う販売会社だ。販売会社は、トヨタから新車を仕入れているかたちとなる。こうした販売会社は、トヨタの場合、東京の一部を除いて各地の地場企業が運営している。
販売各社は、独自の経営思想があり、新車販売、修理事業、中古車販売に加えて地域密着型での多様なビジネスを展開している場合もある。こうした状況を見て、ユーザーのなかには「トヨタは最近、こんなことまでやっているんだ?」と販売会社の事業に対する感想を持つこともあり得る。トヨタ販売会社関係者は、トヨタはほかのメーカーと比べて「販売会社の事業展開に対する自由度が大きい」と指摘する。
いずれにしても、ユーザーにとっては、グローバル経済が安定しつつある中、待ちわびている新車が少しでも早く納車されることを願っている。