モデルチェンジを繰り返して立派なMPVとなったキジャン
シトロエンのFAFと違って、キジャンは1981年にフルモデルチェンジが施され、二代目が登場しています。とはいえ、ご覧のとおりペーパークラフトのトラックかのようにスクエアで平板なデザインは初代と似たり寄ったり(笑)。
ボンネットフードとグリルの拡幅に伴ってヘッドライトが近代化されたり、ちゃんとしたドアがつくなどそれなりの進化はあるのですが、基本構造は変わっていません。なお、ボディがいくらか拡大されたからか、エンジンは1.3リッターの4K型とされ、中低速重視のMTと相まって、「働きっぷり」も向上したといわれています。
1986年になると、インドネシアの経済環境もにわかに活気づいてきたのか、キジャンはまたしてもフルモデルチェンジをして3代目が登場しています。ここまでくると、さすがにミニマリズムな世界とはおさらばしていて、プレス鋼板のボディパネルによって印象はがらりと変わっています。
インドネシア・トヨタは、このFMCにたいそう自信があったのでしょう、ついに「スーパー・キジャン」とモデルネームまで堂々としたものに! しかも、ボディに「Full Press Body」とわざわざバッジを貼るという浮かれっぷりには、思わず頬が緩みます。やっぱり、経済成長ってうれしいものですよね。
スーパー・キジャンは、フルプレスのボディだけでなくインテリアのクオリティも飛躍的に向上しています。鉄板むき出しだったダッシュボードは樹脂成型品になり、吊り下げ式ながらクーラーの装備も可能。エンジンだって1.5リッターに拡大され、1996年のマイナーチェンジ(!)では1.8リッターの7K型へと発展。これなら、日本の道路を走っていてもおかしくない出来栄えだったのではないでしょうか。
とどまるところを知らぬかのように、キジャンの進化は続きました。1997年、またまたフルモデルチェンジが施されると、なんだかマツダのMPVかのようなシルエットになりました。あちらもマルチパーパスビークルですから、出自は似たようなものかもしれません(笑)。
4代目のトピックスとしては、キジャン史上初となるディーゼルエンジンの搭載でしょう。やはり、働くクルマとしてディーゼルは欠かせないのかと思いきや、かの地ではラグジュアリー仕様だったとのこと。
驚くことに、キジャンの車名は現在でも残っていて、キジャン・イノーバという立派なSUVだかミニバンへと成長し、当然ながら初代のブリキ細工かのようなニュアンスは微塵もありません。
ともあれ、キジャンのヒストリーには旧き良き日本車の成長や発展が重なるようで、懐かしさや親近感を感じずにはいられません。ああ、やっぱり「三丁目の夕陽」でしたね(笑)。