トヨタでもVWでもない! 2023年第一四半期に世界で1番売れたクルマは「テスラ・モデルY」だった

この記事をまとめると

■2023年第一四半期において世界でもっとも売れた乗用車はテスラ・モデルYだった

■テスラ・モデルYは世界第1位・2位の市場である中国とアメリカで販売を伸ばした

■第一四半期の新車販売台数でEVが世界1位となったがその先行きは不透明だ

単一車種で初めてEVが世界販売台数1位になった

 自動車市場の調査会社JATOによると、テスラ「モデルY」が、2023年第一四半期において世界でもっとも売れた乗用車となった。販売台数は26万7200台。これに次いで、トヨタ「カローラ」(すべてのボディスタイル含む)が25万6400台、トヨタ「ハイラックス」が21万4700台、トヨタ「RAV4」が21万1000台、そしてトヨタ「カムリ」が16万6200台と続いた。

 当然のことだが、こうした世界販売台数では自動車市場規模がもっとも大きい中国と第2位のアメリカでの売上が大きく響く。JATOの資料によれば、モデルYは中国で前年同期比26%増、またアメリカで68%増と大きく伸びた。

 一方で、カローラは中国で29%減、そしてアメリカで10%減。RAV4はぞれぞれ、16%減、32%減となった。ハイラックスについては、対象国が違い、東南アジア、中南米、そしてアフリカや中東での販売が堅調だ。

 では、中国とアメリカでの市場動向全体を振り返る。

 中国では、同国でのNEV(新エネルギー車)に対する購入補助が2022年で終了するも、市場全体でのEVシフトの動きが根強く、ガソリン車やハイブリッド車の販売に影響が及んだ。また、中国地場メーカーでのSUVシフトが定着し、さらにはミニバン市場の開拓も進み始めている状況だ。

 中国政府は現状で、EVシフトについて明確な達成目標は示していないが、CATLやBYDなど中国地場の電池メーカーが次世代電池の研究開発を加速させている。そのため、トヨタをはじめとした日系メーカー各社は、すでに公表している地場部品メーカーとの連携に加えて、中国製の電動化部品の調達率が今後、さらに高まることが考えられる。

 そうしたなかで、テスラも中国地場部品メーカーとの関係を深めて、自社EVの基本性能アップとコスト削減のバランスを上手くとっていくだろう。

 一方、アメリカでは2021年8月、バイデン大統領が2035年に向けたクルマの電動化に関する大統領令を発令。その1年後には、国内投資を促すIRA(インフレ抑制法)を施行した。これに対応するため、日系メーカー各社はアメリカ国内でのEV製造体制を急ぐ必要となった。

 これに対してテスラは、日系メーカーに先んじてアメリカ国内での生産能力を高め、量産効果を上げる流れになってきている。

 では、テスラは「モデルY」や「モデル3」、さらには近年中に発売予定のピックアップトラックEV「サイバートラック」などで、さらに業績を伸ばしていくのだろうか?

 筆者の私見としては、テスラに限ったことではないがEV市場は「先行き不透明」と言わざるを得ない。近年のBEV市場の拡大は、欧州連合、アメリカ、そして中国の間での、投資を巡る政治的な駆け引きによるところが大きい。そのため、今後の政権交代や施策の変更によってEV市場拡大のスピードは大きく変わる可能性があると考えられる。

 そのなかで、BEVブランドとしてグローバルで認知度を高めているテスラと、既存の大手自動車メーカー、さらには中国や東南アジア等のEVベンチャーとの、EV市場におけるパワーバランスがどう変化していくのか?

 今後のEV市場動向を注視していきたい。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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