いまでも根強いファンの多い名車が続々と生まれた
1980年代後半は「低さ」をテーマに駆け抜ける
この1980年代前半の名作群を次の時代にどう引き継ぐのか? 実際にはさまざまな論議があった筈ですが、そのひとつとして先の2代目プレリュードを筆頭とした「低さ」への注目があったように思えます。
その機運は、まず1985年の初代レジェンドに見られ、翌年、180度の趣旨替えでファンを驚かせた2代目シティで本格スタート。1987年にはシビックとCR-Xがモデルチェンジしますが、先代を基本としながらも、より低くスリムな佇まいが特徴です。両車ともこの世代の人気が高いですが、このわかりやすいスポーティさが理由かもしれません。
そして、この流れの集大成が1989年に登場したアコードインスパイア/ビガーです。縦置きエンジンによるFFミッドシップという特殊な機構が前提とはいえ、低く、長いボンネットに小さなキャビンを載せたハードトップボディは「低いホンダ車」を決定付けました。そこに高い合理性は感じられませんが、大幅にアップした質感や明快なカッコよさが、1990年代初めの個性となったのは間違いないでしょう。
こうしてホンダデザインの黄金期が築かれたワケですが、冷静に見ると、1980年代前半に圧倒的な実績を残し、その資産を使うことでギリギリ1990年代に届いたようにも感じられます。したがって、同じ黄金期でも前期と後期ではデザイン要素がかなり異なり、それぞれにファンを持つ点が面白いところです。
さて、時は過ぎ、現在のホンダデザインはシンプル回帰路線を歩んでいますが、果たしてこれが後に「令和の黄金期」と呼ばれることになるのでしょうか?