インテリアの完成にはなんと9カ月もの歳月を要する
ロールス・ロイスでは、オープンモデルを「ドロップヘッドクーペ」と名付けているが、同車では取り外し可能なハード・トップも備えている。このハード・トップは、ラ・ローズ・ノワールの専用ルーフとなっており、高速走行を実現する長めのレーキ角をとっているほか、エレクトロクロミック・ガラスも採用されているので、ボタンを押すだけで瞬時に半透明に近い色合いに変化。ルーフを閉じたまま空を見ることもできるのだ。
エクステリアのそのほかの箇所では、フロント・エア・インテークの下部に、デジタルで設計した後に軽量複合材を用いて3Dプリントされた装飾も装備。これは手作業の研磨とトゥルー・ラブのカラーでハンドペイントを施した202個のステンレス製インゴットを組み込んでいる。
アルミホイールも特別だ。ボディカラー同様に見る角度で色が変わる塗装を施しているほか、高精度のダイヤモンド・フライス加工によってペイント部分を取り除き、露出したベース合金素材のアクセントを研磨。色だけでなく美しいデザインも取り入れている。ちなみにサイズは22インチだ。
インテリアは、2年にも及ぶ研究開発の後に誕生したという、エクステリアの各要素に負けないほどスペシャルな仕立て。
まず特徴的なのは、1603ピースの黒いウッド・ベニヤの三角形によって、舞い落ちるバラの花びらが抽象的に描かれているインテリア。この極めて複雑な模様は、背景に1070もの完全に対称な要素を使い、非対称に配置されたの赤いピースで、車名の「ローズ」の名に相応しいバラの花びらを表現。このアシンメトリーな仕上がりは、「散り際」を表現するためにユーザーよりリクエストされたものだという。
これらの素材は、ラ・ローズ・ノワールの原産地、フランスへのさりげないオマージュとして、フランスで調達されたブラック・シカモア材を使用し、ひとつひとつ手作業で三角形にカットし、やすりをかけ、正確に配置される。この素材は自然素材のベニアであるため、色の劣化を防ぐための専用ラッカースプレーを1年かけて開発したというから驚きだ。
そのほかの車内各所もほかに類を見ないほど徹底的にこだわり、まるで美術品のような仕立てとするため、ここまで仕上げるのにひとりの職人が1時間、1日にたった5時間程度しか作業できないほど、集中力と技術力が求められていたという。
ちなみに、このインテリアの作業をするために、外部の音が入らない専用の部屋に篭って作業したと言われており、完成までに9カ月ほどの期間がかかっている。
インパネには43mmのケースサイズとなっている「ロイヤルオークコンセプトスプリットセコンドクロノグラフ GMTラージデイト」という、フライバッククロノグラフとスプリットセコンドを備えた独自の自動巻きムーブメント、キャリバー4407を搭載する。もちろんこの時計も、オーナー自ら発注したワンオフ品となる。ちなみに取り外して使うことも可能とのこと。
さらに、この時計を外すと、開口部はエレガントなチタン製の透かしが施されたブランクヘッド・ウォッチで覆われ、オーデマピゲの職人が手彫りで仕上げたバラの彫刻が現れるホワイトゴールドのコインが現れる。
説明し切れないほどさまざまなこだわりが詰め込まれた世界に1台だけの「ラ・ローズ・ノワール・ドロップテイル」。ロールス・ロイスがどれだけユーザーに親身になってクルマをプロデュースし、脅威の技術力をもってクルマを作っているのかがわかるニュースだ。