エンブレムを拝むほどの熱愛っぷり! クルマを「神と崇める」レベルの妄信的ファンをもつモデルたち (2/2ページ)

海外に総本山のあるグローバルな宗派も!

911教:ポルシェ911

 これまた、クルマ好きのまわりには大勢いそうです。なにを隠そう筆者も一時期かぶれていまして、カレラやヴァイザッハ、あるいはニカシルコーティングなんて「念仏」を耳にすると「ありがたや、ありがたや」と目じりを下げていたものです。

 ですが、911教ほど宗派の枝分かれが複雑で、またそれぞれが反目しあっているかのようなところはありません。たとえば、911教の原点にして多数派を占めているのが「空冷派」とすると、この中でも「NA宗」と「ターボ宗」に分かれるほか、「タルガ宗」や「全輪駆動宗」なんてややこしい信者もいるという始末。

 お察しのとおり「水冷派」というのも「インターミディエイトシャフトの乱」こそあれ、着実に勢力を増しており、「空冷派」を原理主義者などと呼び、隙あらば駆逐せんばかりの構え。しかも、「空冷派」と「水冷派」は、いずれも「RS分派」や「GT分派」といった過激分子が潜んでおり、なかでも「73RS党」などは、911教からの分離独立すら狙っているという噂です(1973年の911RSと呼ばれているクルマ、じつは911が付かず正式車名はRSとされています)。

 しかも、911教は滅多なことでは抜けられないことでも有名です。自分では抜けたと思っていても、なにかの拍子に「そういうの911じゃありえないから」とか「剛性感が911には遠く及ばないね」などと口をついてしまい、周囲は「あ、まだ洗脳が解けてないわ」と密かな憐れみすら感じているわけです(笑)。

ハイドロ教:シトロエン

 もともとシトロエンのハイドロニューマチックという独自のサスペンションを崇拝していたはずですが、これまた分派なのか新派なのか旧いアメ車に大型コンプレッサーを載せて、ピョンピョン跳ねたり、妙な車体姿勢で走らせたりする宗派も生まれています。

※写真はイメージ

 また、ハイドロ教の原典は乗り心地の良さにあるのですが、この教義を追求するあまり、他のエアサスやマグネティックライドシステムへの敵愾心とか不信感はまさに狂信者のそれに等しいかと。

 例えば、レンジローバーのハイエンドモデルに搭載されたアクティブ・エアサスペンションは希代の出来栄えかと思うのですが、サラッと「完全に同調のとれたハイドロニューマチックと変わらないね」といった御託を並べ始める始末。

 それでいて、インパラあたりが飛んだり跳ねたりするのを見て「シトロエンがハイドロ作ってなかったら、ああいうやつらも生まれなかったのだ」などと上からなのか、生温かいのかわからない視線。

 ブードゥー教やゾロアスター教など、人々の無知から迫害を受けた宗教もありますが、ハイドロ教は無知に加え、痛烈なほどの唯我独尊でもって迫害されてしまいそう。もっとも、ハイドロ・シトロエン原理主義者はすでに絶滅の危機に瀕していますから、キリスト教のアーミッシュかのように一般社会からは温かく見守られるのかもしれません(笑)。


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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好きな有名人
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