この記事をまとめると
■日産の初代エルグランドは1997年に登場した
■当時では類を見ない「高級ミニバン」というジャンルで大ヒットした
■2002年にはトヨタがライバル車種「アルファード」を投入してきた
栄光の初代エルグランドを振り返る
現時点で国産ハイエンドミニバンとして君臨しているのは、発売されたばかりのトヨタ・アルファードとヴェルファイア、そして日産エルグランドだ。エルグランドはこのところ、販売台数でアルヴェルに大きくリードされ続けている。その理由がエクステリアデザインの堂々感、先代アルヴェルの1400mm(新型は1360mm)に対して1300mmという室内高がもたらす室内の広々感で劣る点、アルヴェルには当初からあるハイブリッドモデル(日産ではe-POWER)の不在、そして先進運転支援機能の充実度でアルヴェルに後れを取っている点などが挙げられる。
もっとも、インテリアの豪華さや特等席となる2列目キャプテンシートのかけ心地に関しては、決して大きく引き離されているわけではない。とはいえ、現行型の3代目エルグランドは2010年のデビューであり、もう13年。基本設計の古さは隠しようもない。
が、おそらく2024年には4代目がe-POWERやプロパイロットを引っ提げて、さらにはハイブリッドシステムを搭載し、先進運転支援機能を充実させて登場すると予想されており、国産ハイエンドミニバンのアルヴェル一強の構図が変わる可能性もある。その立ち位置を確立し、多くの一般ユーザー、VIP、芸能人などに愛用されているアルヴェルを倒すのは並大抵のことではないが、国産ハイエンドミニバンの選択肢が広がることは大歓迎ではないか。
しかし、そんな日産エルグランドの初代モデルこそ、国産ハイエンドミニバンの元祖であり、のちのトヨタ・アルファードとヴェルファイア登場のきっかけともなったことを忘れてはいけない。
1997年、つまり初代トヨタ・アルファードがデビューする2002年より5年も前に登場した初代エルグランドは、セミキャブオーバータイプのパッケージングを採用し、それまでの商用ワンボックスカーとは一線を画すミニバンデザイン(助手席側のみスライドドア)、広大な室内空間、フラットフロア、前後席ウォークスルーを実現。商用車とは別物の操縦性、パワフルなV6エンジンのラインアップ、オールモード4×4、上級グレードの本革シートの設定など、当時、大注目を集め、空前の大ヒット。
なお、基本部分はR50系テラノ(SUVゆえに駆動方式はFR)と共用。車名は当初、その前身を引きずって、販売店によって、キャラバンエルグランド、ホーミーエルグランドとネーミングされていた。キャッチフレーズは「最高級新世代1BOX」。室内はズバリ「ファーストクラス」と謳われていた。グレードは7人乗りのX、8人乗りのV、Jの3タイプ。パワーユニットはディーゼルのQR32Eti、150馬力、34.0kg-m、およびガソリンのVG33E、170馬力、27.1kg-m+4速ATだった。2000年のマイナーチェンジでは新開発ガソリンエンジンのVQ35DE、177馬力、36.0kg-mを搭載している。
しかも、翌1998年には、いま話題のレクサスLMの最上級グレードに相当する、贅沢にもほどがある2列シート、4人乗りのロイヤルラインを設定(オーテックジャパン製、当時の日産の社長車)していたのである。
まさに先見の目がある国産ハイエンドミニバンだったというわけだ。1997年5月の発売から1カ月で受注は約1万7000台に達し、2002年に2代目に移行した翌2003年には、初代からの国内販売台数25万台を記録。その記念車も発売されたほどで、日産の大ヒット作の1台となったのである。