高級ミニバンの先駆けだった
筆者の当時の試乗メモによれば、乗用ハイエンドミニバンというカテゴリーでライバルなき存在として、その手法がいまでも継承される迫力満点の2段構えの顔つき、3列シートフル乗車にも対応するV6エンジン(当初はVG型3.3リッター、2000年にVQ型3.5リッターに拡大)のゆとりある動力性能(直4もあり)、当時のセドリック、グロリア並みのインテリアのデザイン、質感、商用車とは異なる自然なドライビングポジション、とある。
また、5代目ホンダ・オデッセイにも採用された、リラックス度を高める2列目キャプテンシートの背もたれ中折れ機構、2/3列目席回転対座機構といった大空間を生かした居住性を高めるアイディアが際立っていた。もっとも、3列目席使用時のラゲッジスペースの奥行きは最小限だったと記憶する。
走行性能は平凡。パワフルさを売りとしたためか、発進はドーンと前に出るし、巡行時は静かなものの、エンジンをまわすと途端にうるさくなるのが気になった。が、全高、重心、運転席の着座位置こそ高いものの、操縦性は意外なほどしっかりしていて、乗用車感覚で不安なく走れたのだった(当時の試乗メモによる)。
国産乗用ハイエンドミニバンとして初のクルマだけに、いいところもイマイチなところもあったわけだが、当時としては唯一無二の存在であったことは間違いなく、繰り返すけれど、ハツモノとして大ヒット。国産ミニバンの歴史のなかで、大いなる偉業を遂げた1台なのである。
いまでは一世を風靡するVIP御用達車であるトヨタ・アルファードの初代(基本部分はエスティマ)が、エルグランドの2代目登場のタイミングとなる2002年にデビューしたのも、初代エルグランドが2年弱で20万台を売った大ヒットあってのこと、とも言えそうだ。
ゆえに、2024年にも登場するはずの4代目新型エルグランドには、このクラスの先駆者としての意地をみせてほしいところ。e-POWERでついにハイブリッドモデルが加わり、プロパイロット(2.0か新型?)で先進運転支援機能を充実させるのは当然として、あとはアルヴェルを打ち負かす、あるいは同等の存在感、迫力あるエクステリアデザインと室内高のゆとりが成功のポイントになると”勝手に”思ったりする。
ちなみに、おなじみのハイウェイスターというグレード名が残るとしたら、一般ユーザーにはウケると思うが、VIP御用達車としてはどうだろうか……。