伝説のドラテク「ゼロ・カウンター」に「セナ足」! レーシングドライバーが凄ワザを解説する!! (2/2ページ)

伝説のレーサーが編み出した技は理にかなったモノだった

セナ足

 平成生まれの世代の人は知らない人も多いかもしれないが、故アイルトン・セナ(以下セナ)が行なっていた通称「セナ足」も伝説的なドライビングテクニックと言われている。

 1978年、宮城県のスポーツランド菅生で開催された「ジャパンカートレース」に、当時18歳のセナ(当時はアイルトン・センナ・ダ・シルバのフルネームでエントリー)が参加した。

 すでに天才カーターとして評判の高かったセナの走りを取材するため菅生を訪れ、そのアクセルワークを間近に見た。どのコーナーでもコーナーリング中にアクセルを小刻みに操作する、一見不利な走法に思えた。実際アクセル全開のまま駆け抜けていく国内のトップカーターの速さには及ばず、セナはこのとき4位だった。しかし、彼はその後の英国F3でチャンピオンとなってマカオGPも制し、数年後の1984年にはF1ドライバーとなっていた。

 F1に上がってからはオンボードカメラや足もとカメラにより、セナは変わらず「セナ足」を操っていることがわかる。知らないサーキットで操りにくい大パワーを短時間にトップレベルの速さで乗りこなさなければならない。欧州のレースはそういう環境だ。何度も走り、限界を掴んで確信してアクセル全開で行けるように習熟する時間はない。そうした環境ではアクセルを小刻みに操作して回転の落ち込みを防ぎ、吸気ポートで気流が滞るのを防ぐ意味でもセナ足は有効なのだった。

※画像はイメージ

 後年、F1で世界チャンピオンとなったセナが、鈴鹿日本GPの翌日に鈴鹿サーキットでホンダNSXを走らせるシーンをベストモータリングが収録した。その足もとカメラにはNSXでもセナ足を行なうセナの姿が明確に収録されていたのだ。

 当時ベスモのキャスターだったボクはその解説をした記憶がある。ボクや星野一義選手などの国内のトップドライバーは、コーナーの立ち上がりでアクセル全開にする手前でパーシャルスロットル状態を維持している間合いがある。走り馴れたサーキット、マシンならその踏み加減がわかり、アクセル開度を一定に保てるのだが、最初の1周目だったらそれこそセナ足のようにアクセルを操作して最適な踏み加減を模索するものだ。世界中を転戦するレーサーならではのテクニック、というのが「セナ足」に対する僕の見解だ。

 ゼロ・カウンターもセナ足も映像媒体によって世界に広められ、多くの人が知ることとなった。


中谷明彦 NAKAYA AKIHIKO

レーシングドライバー/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

中谷明彦
愛車
マツダCX-5 AWD
趣味
海外巡り
好きな有名人
クリント・イーストウッド、ニキ・ラウダ

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