自動車メーカー同士の「提携」は避けられない時代の苦悩! 「らしさ」探しがメーカーの課題となる

この記事をまとめると

■自動車メーカー同士が事業提携による協業をする例が増えている

■その背景には「CASE」への対応による研究開発コストの増大などがある

■協業で経費削減と効率化は大幅に向上するがブランドの個性は薄まることになりかねない

研究開発コスト削減のための連携で個性が薄まる

 近年、自動車メーカー同士が事業において手を結ぶことが増えている。直近では、トヨタとダイムラートラックが、それぞれの傘下にある日野と三菱ふそうの事業を統合することが明らかになった。バス、トラック、商用車の分野では、歴史的な大連合の誕生であるとして大きな話題となっている。

 また、ルノー・日産・三菱におるアライアンスという形体もあるし、マツダとスバルはトヨタとEVなどでの技術提携をしている。

 自動車メーカーどうしの連携はこれまで数多くあるが、その多くはOEM供給が主体だった。OEM供給は、相手先ブランド製造(または販売)と略されることが多い経営手法で、自動車産業以外でもさまざまな産業で用いられている。

 自動車の場合、もっとも多いのが軽自動車のOEM供給で、スズキとマツダの事例がある。さらにもう一歩踏み込んだ軽自動車におけるメーカー間の連携が、日産と三菱の合弁事業であるNMKVだ。連携の成功事例が、日産「サクラ」と三菱「eKクロスEV」である。

 EVという切り口では、トヨタ「bZ4X」とスバル「ソルテラ」があり、これはOEM供給ではなく、NMKVと同じく共同開発という部類になる。

 では、なぜ近年、自動車メーカーどうしの連携強化が進んでいるのか?

 主な原因は、やはりCASE(ケース)への対応だ。自動車業界のみならず、経済界では2010年代中盤頃からすっかりお馴染みになった用語である。改めてだが、CASEとは、C:通信によるコネクテッド、A:自動運転や先進運転支援技術、S:シェアリングなどの新事業、そしてE:EVを筆頭とする電動化を指す。

 こうしたCASEの各分野が、単独で技術進化するのではなく、各分野で複合的な関係を持つ場合が少なくない。そのため、メーカーにとっては、研究開発コストが従来の新車開発と比べて桁違いに大きくなってしまう。

 そこで、自動車メーカー同士の連携よる、いわゆる量産効果によって部品当たりの単価や開発工数の減少といったコスト対策を施しているのだ。

 そうしたなかで、これから自動車メーカーにとって重要になるのが、いかに自社ブランドの方向性を明確化した「●●らしい」クルマを作るかであろう。

 部品やプラットフォームの共通化が進めば、他社との違いは「見かけだけ」になり兼ねない。また、EVになって、モーター制御を工夫するといっても、ロータリーエンジンや水平対向エンジンといったメーカーとしての特長を打ち出すことは極めて難しいものと考えられる。

 その上で、自動車メーカー各社が昨今、よく挙げる言葉が「●●らしさ」だ。これは、たんなるクルマの味付けではなく、ブランドイメージ全体を指す。

 今後、自動車メーカーの連携がさらに進むことは確実な情勢であり、メーカー各社は「●●らしさ」探しに苦労することになる。


桃田健史 MOMOTA KENJI

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トヨタ・ハイエースキャンパーアルトピア―ノ等
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動物たちとのふれあい
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聖徳太子(多くの人の声を同時にしっかり聞くという伝説があるので)

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