BEVが既存ディーラーの「既得権益」を打破する! ヤマダデンキでの軽EV販売に見る無限の可能性 (2/2ページ)

ディーラー以外で買えるようになれば輸入BEVの参入が増える

 輸入車系ではバブル経済のころに輸入車販売台数が急激に伸びたこともあり、短期間で販売網拡充の必要性があったので広くオーナーを求めた時期があったが、その当時のオーナー審査が甘かったこともあったのか、一部ブランドでは反社会的勢力にディーラー権を与えてしまい、後に解約金を払ってディーラー権を取り戻すといったこともあったと聞く。

 審査が甘く、“お行儀”のあまり良くない企業などにディーラー権を与えると、相手が反社会的勢力ならば資金洗浄の温床になってしまうし、反社会的勢力以外でもメーカーから仕入れた新車をそのまま海外へ輸出してしまうなど、想定外のトラブル発生リスクも高まってしまうのである。

 何がいいたいのかいうと、ICE(内燃機関)車においては、前述してきたように賛否は別として、すでに既得権益のようなものも発生しているようなので、メーカー系正規ディーラーへの仲介販売のような形を除けば、同じ店舗で複数メーカーの新車や異業種店でメーカー系正規ディーラーのような形で購入できたりするようになるのはかなりハードルが高いのだが、“BEV”という新たな存在はそれを打破する可能性を秘めているといえるのである。

 韓国ヒョンデ自動車のBEVであるアイオニック5は日本国内ではオンライン販売のみとなっている。BEVはICE車に比べると部品点数が少ないし、故障も少ないとされている。また、消費者目線で考えれば、たとえば家電量販店でICE車が買えるとしても、いままでのイメージもあり馴染みにくいが、“BEV=電気自動車”となれば、家電量販店で買えるとなっても違和感を覚える人は少ないともいえよう。つまり、BEVが新車の異業種販売へのハードルを下げる要素を持つともいえるのである(とくに海外ブランド車では)。

 現状の日本の自動車メーカーの動きを見ていれば、普及レベルでの“日系BEV”がなかなか登場しないなか、韓国や中国からさらにお値打ちなBEVが上陸することは十分考えられる。そのようなメーカーにとっては、自社で日本国内に販売ネットワークを構築するコスト負担や、そこまでの費用対効果を望まないならば、日本全国に販売店舗を持ち、ヤマダデンキのように、外部と提携したアフターメンテナンス窓口もしっかり確保していれば、大規模小売店舗に販売を任せるメリットも高い。その意味では自力でリアル店舗の全国展開を進めている中国・比亜迪(BYD)の動きには日本市場に対する本気度と言うものを感じてならない。

 日系メーカーは、異業種販売となるとメーカー直資系ディーラーの販売地域内など、地場資本系ディーラーへの配慮などもあり(競合させない)、異業種での新車販売には慎重にならざるをえない。

 単にBEVというハード自体で先行しているというだけではなく、日本国内ではオンライン販売の積極化や家電量販店やホームセンターなどで海外メーカーだけでも複数のBEVが手軽に買えるようになるなど柔軟な対応が進めば、海外BEVメーカーの優位性がさらに高まっていくかもしれない。

 令和の時代に、ひとつの店舗でひとつのメーカーの新車しか購入検討できないというのは、どう見ても“タイパ(タイムパフォーマンス/時間対効果)”が悪いのは間違いない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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