電動化したら「存在価値」がなくならない!? 昭和のクルマ好きオヤジが心配するクルマ3種 (2/2ページ)

まだまだある!? 断じてBEV化反対のクルマ

 さて、「電動化による車両重量の増大」を理由にマツダ・ロードスターとトヨタ86、スバルBRZなどのライトウエイトスポーツカーは“断じてBEVになって欲しくない”と訴求してみました。じつはさらに、「このクルマをBEVにしちゃうのはマズいだろ!?」という1台が有ります。

 それはズバリ、1951年からトヨタが製造・販売しているランドクルーザーです。通称“ランクル”と呼ばれる大型クロスカントリー車は、当初トヨタが警察予備隊(現・陸上自衛隊)への納入を狙い、ジープBJ型として開発されました。

 トラックのシャシーを流用し、梯子型ラダーフレームを補強・改良したうえで、さらに二〜四駆の切り替えが可能なトランスファーを採用。エンジンはトラックや大型バスに用いられた3.4リットルの直列6気筒OHVを搭載した、まさしく実用本位・質実剛健なクルマでした。

 その後、マイナーチェンジ&フルモデルチェンジを何度も繰り返しつつ、多くの人が「ジープ!」と勘違い……じゃなかったイメージしているスタイリングとタフでヘビーデューティな走行性能により、20系から40系が1980年まで人気を博します。

 で、多くの人がランクルのイメージを抱いている60系がデビュー。それまでの機能優先からラグジュアリー路線を加味した60系は、その後どんどん豪華かつ大型化していきます。が、エクステリアとインテリアがどんなに豪華絢爛になってもその機能性と走破性は衰えず、日本はもちろんアフリカや中近東の人達がベタ惚れ! 生産が間に合わず、盗難→転売がもっとも頻発したクルマとしても有名になっています。

 また、1984年にデビューした、スクエアなボディを継承しながら進化を続ける70系も、ランクルファミリーのなかでは見逃せないモデルです。2023年の冬に約8年ぶりに日本で発売予定の新型は3ナンバーになり、ちょっぴりラグジュアリーさが加わって、前席と後席の居住性がいくらか快適になったとか。

 えっ? 「クロカン四駆が電動化したら、電気モーターのおかげで四輪へのパワー配分がリニアになるし、そのうえゼロ発進から大トルクが得られるから、悪路走破性がグンとアップするじゃないか!」って!?  なになに? 「それに峠道をカッ飛ぶわけじゃないから、車両重量が増大したってそんなにデメリットじゃないだろ!」って!? はいはい、おっしゃるとおりです。

 ランクルのBEV化反対の理由は、まさにその電動化によって生じる悪路走破性の向上にあるんです。走破性がアップしたことで、ランクルがさらに過酷な環境で使用されたり、もっと未知なるフィールドへと走り込んで行ったりした際、バッテリーが切れてしまったらもうおしまいですから! ガソリン&ディーゼルのエンジン車だったら予備の燃料を入れれば走って帰って来ることができますが、BEVには“予備の電気”なんてないですから、電池が切れたらそこで立ち往生するしか有りません(そもそも市街地や郊外でさえも、充電スタンドなどのインフラが整備されきれていないというのが、BEVが抱える大問題です)。

 ランクルを売っているトヨタ自身が「どこへでも行き、生きて帰る」というコンセプトを謳っているくらいですから、「もしかしたら生きて帰ってこれない!?」のではランクルのレゾンデートル(=存在理由)が成り立ちません。

 ……かように、BEV化による重量増加によってライトウエイトスポーツカーの存在理由が、BEV化による走破性向上によってクロカン四駆の存在理由が否定されてしまうのです。

 そのほかにも、BEV化による静寂性の向上も、あるジャンルのエンジン車の存在理由を否定してしまう例があります。それはエンジンサウンドが魅力的なクルマのこと! たとえば官能的とさえ表現されるエンジン音を奏でるフェラーリや、あるいは硬派かつ躍動的なポルシェです。この象徴的なスーパーカーブランドでさえもV12エンジンやフラット6を捨て、電気モーターに切り替えようとしているのです。

 ほぼ無音の電気モーターの走りは、それはそれは静かでリラックスできるかもしれませんが、聴力から得るスポーツドライビングの魅力は失われてしまいました。心をワクワクドキドキウキウキさせるサウンドも、スポーツカーの醍醐味のひとつだったんじゃありませんでしたっけ!?

 BEVの作り手側もそのへんのトコロは気にしているようで、その証拠にポルシェはBEVのタイカンに「ポルシェ エレクトリック スポーツ サウンド」というオプション機能を設定していて、加速とともにフォォォ〜〜ンというエモーショナルなサウンドを発生。

 ダッジに至っては、2024年デビュー予定のチャージャーのBEVを示唆したコンセプトモデルで、126dB(飛行機のエンジン音が120dBですからかなりの爆音)の“架空エキゾーストノート”を搭載してみたり……。ドライバーのみならず街行く人々の感性を刺激しようと試みています。

 ……というわけで、「ライトウエイトスポーツカーでピュアなスポーツドライビングが味わえない」「フィールドから帰ってこれない」「五感を刺激するサウンドがない」という“3ない”で、筆者はクルマのBEV化を杞憂するのです。昭和生まれのオヤジの取り越し苦労だといいのですが……。


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