ライバルだった脇阪監督は「実力が落ちたわけではない」と語った
「先ほどの立川の挨拶で“昔はなんとかなったけど、最近はなんとかならなくなった”という話がありましたが、誤解されたくないので言わせてもらうと、彼は老いたわけではない。昔は誰もがなんにもできないようなことを、彼がなんとかして勝ってきた。ポールポジションをとれないクルマでポールを獲ってきたんです。そういった感覚があるからこそ、そういったことができなかった数レースが苦しくて、葛藤して、引退を決めたんだと思います。だから、僕は言いたいです。あなたは(実力は)落ちていません。残り5戦ありますので、優勝してもらいたいし、独特のオーラをまとって輝く38号車を見せてください」。
かつてのライバルであり、親友でもある脇阪監督のこの言葉こそ、筆者が記者会見でもっとも印象に残るものだったが、事実、立川選手はこれまで劇的な勝利を飾ってきた印象が強い。
なかでも、筆者が鮮明に覚えているレースが2012年の開幕戦・岡山で、レクサスSC430を駆る立川選手が最終ラップで逆転して優勝。また、SC340のラストイヤーとなった2013年には有終の美を飾るべくタイトルを獲得するなど、立川選手は“ここぞ”というときに活躍して見せた。
近年は走行直前までピット周辺をウロウロとするドライバーが多いなか、立川選手はいち早くヘルメットを被り、コクピットのなかで集中しているシーンは、まさに出撃を待つパイロットのような雰囲気で、立川選手は独特の緊張感を持つ。
その一方で、インタビューではサービス精神が旺盛で、質問に対して丁寧に答えたり、ときに冗談を交えてはにかんだりするシーンがあったりと、そのギャップも立川選手の魅力といえるだろう。
残り4戦で引退してしまうのはじつに寂しいところではあるが、立川選手は要所要所で活躍してきただけに、残りのレースでどのようなドラマを見せてくれるのか? 最終戦の最終ラップまで立川選手の動向に注目したい。