この記事をまとめると
■スポーツカーの発売が話題になるとクルマの世界全体が盛り上がる
■しかし多くのスポーツカーが納期遅延となっており受注停止に陥っているモデルも多い
■日本はスポーツカーの重要度が低くスポーツカー市場とみなされていないことも一因
スポーツカーを新車で買えない市場となっている日本
日産は2023年8月に入り、フェアレディZの2024年モデルを発表して、スカイラインNISMOも追加投入した(発売は9月)。「スポーツカーが売れない」といわれながら、定期的に新型車を投入するのは好ましい。「カッコ良くて速い」スポーツカーは、クルマの魅力の象徴だから、それが話題になるとクルマの世界全体が盛り上がる。
しかし、実際に買えるか否かになると、事情は違ってくる。たとえばフェアレディZは、2023年8月時点で受注を停止している。現行フェアレディZの登場は2022年4月だが、実質的な販売期間は短く、街なかでもほとんど見かけない。2024年モデルも「納期長期化の解消目途が立ち次第、新規の注文を検討する」としており、先行きは見通せない。いつ買えるのかわからない状態だ。
このほか、トヨタの販売店によると、「GR86の納期は4〜5カ月だが、スープラは約10か月を要する」としている。ホンダでは「シビックタイプRは納期が遅延して、受注を停止した」とのこと。スイフトスポーツのように「3カ月程度で納車できる」スポーツモデルもあるが、例外に近い状況だ。マニュアルトランスミッションを選択できるようなスポーツカーは、全般的に納期が大きく遅れている。
スポーツカーの納期が遅延する背景には複数の理由がある。まずは生産規模が最初から少ないことだ。軽自動車やコンパクトカーのような大量な販売を目的とした車種ではなく、趣味性の強い商品だから納期も遅れやすい。
ふたつ目の理由は、半導体なども含めて、特殊なパーツが多く使われること。一般的なパーツを使う軽自動車やコンパクトカーに比べると、納期を遅らせる原因が多い。
3つ目の理由は、海外を主な市場としていることだ。コンパクトカーは海外でも売られるが、国内の販売比率が50%前後に達する。これに比べてスポーツカーは海外比率が高く、日本は少ないから供給が遅れやすい。悪路向けSUVのランドクルーザーなども、中東諸国やオーストラリアの需要が多く、日本国内の販売台数比率は10%を大幅に下まわるから、コロナ禍前から納期を遅らせていた。
結局のところ、日本は軽自動車/コンパクトカー/ミニバン/SUVの市場と割り切られているが、以前に比べると状況は好転してきた。もう少し頑張ると、スポーツカーを中心にクルマの世界が明るくなっていくだろう。