実車ではタイヤの性能が露骨に出る 次に話をうかがったのが、ANEST IWATA Racing with Arnageで50号車「ANEST IWATA Racing RC F GT3(レクサスRC F GT3)」を駆るイゴール・オオムラ・フラガ選手。フラガ選手は幼少期からeスポーツで活動を開始しており、2018年にはFIAグランツーリスモチャンピオンシップのネイションズカップで初代チャンピオンに輝くほか、2019年および2020年にはマニュファクチャラーシリーズで2連覇を達成。
一方、リアルスポーツにおいても2003年から日本でレーシングカートを始めたほか、母国ブラジルに帰国してからは四輪レースにも参戦しており、2017年にブラジルF3アカデミークラスでチャンピオンに輝くほか、2020年にはトヨタレーシングシリーズでチャンオピオンに輝くなど豊富な実績を持つ。
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そのフラガ選手にeスポーツとリアルスポーツの共通点を尋ねてみると、「eスポーツはいろんなコースやいろんなクルマに乗れるし、大会では1日で3コースを使ったり、3回とも車種が変わったりするので、それぞれのスタイルに合わせなければならないので応用力が求められると思います」としたうえで、次のように語っている。
「eスポーツはかなり進化していてクルマの動きがリアルになってきました。100%同じではないけれど、コントロールの仕方は似ていると思います」とフラガ選手。
一方、eスポーツとリアルスポーツの相違点については、「リアルではタイヤのパフォーマンスの影響が大きいですよね。eスポーツではそこまで再現できていないので、タイヤの表面グリップなんかはリアルスポーツでしか体験できない。eスポーツは100%を超えるとグリップが一気に下がるけれど、リアルスポーツは100%を超えてもグリップの落ち幅が低いので、そのあたりのタイヤの使い方がリアルスポーツは違います」と語る。
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さらに「eスポーツは個人戦で、セッティングを含めて自分で行いますが、リアルスポーツはチーム戦なのでメカニックやエンジニアと組んでセッティングを行うところが違います。eスポーツではセッティングやレース戦略を学ぶことができますが、リアルスポーツではチームとのコミュニケーション能力が重要になってきます」と付け加える。
そのほか、フィジカル面やメンタル面でも大きな違いがあるようで「リアルスポーツは振動とかさまざまなインフォメーションがあるので、クルマの動きを感じ取ることができるんですけど、その一方で横Gがかかってくるのでトレーニングをしないと疲れがきてしまう。リアルスポーツをやりだしてからトレーニングをしていますが、第3戦の鈴鹿では50ラップ以上も走っていたので疲れました。それに、リアルスポーツではクラッシュをしたら怪我をするリスクもあるので、バーチャルなeスポーツより恐怖心は強い。リアルスポーツならではの緊張感がありますね」と付け加える。
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現在もeスポーツとリアルスポーツを並行してチャレンジするフラガ選手は「リアルスポーツではクルマでトレーニングする時間が限られている。とくにスーパーGTはテスト走行の時間が少なく、タイヤの種類も多いですからね。そのために、eスポーツを活用して、レース前にイメージトレーニングしたり、バーチャルで試して良かったことをリアルスポーツでトライししています」とのこと。
このようにeスポーツとリアルスポーツは、クロスオーバーしながらも“似て非なる世界”となっており、バーチャルの経験をリアルレースで活かすためには、それぞれの特徴を把握することがポイントとなっている。