この記事をまとめると
■日本で電動車の販売台数をみればいまでも圧倒的にハイブリッドが強い
■BEVに関して言えば国産よりも輸入車のラインアップが多い
■海外メーカーにしてみればBEVが日本市場の突破口になっている
国内販売されるBEVの半分弱が日産サクラ
国内で販売される乗用車に占める電動車(モーターを搭載しているクルマ)の比率は、軽自動車を含めて約50%に達する。ただし、この電動車の内訳を見ると、マイルドタイプを含んだハイブリッドが圧倒的に多い。BEV(エンジンを搭載していない純粋な電気自動車)は乗用車全体の2%少々だ。
しかも国産BEVでは日産が大多数を占める。とくに販売の好調な車種がサクラで、2023年1〜7月の1カ月平均届け出台数は3252台に達した。サクラだけで、国内で販売されるBEVの40〜45%を占めてしまう。
ところが輸入車を見ると、BEVのラインアップが大幅に増えている。日本メーカーは、ラインアップが多くても3車種程度で、1車種のメーカーも目立つのに、輸入車では4車種以上のBEVを輸入販売しているブランドも多い。
たとえばボルボは、車種の数は多くないが、日本国内販売総数に占めるBEVの比率が約10%に達する。ボルボはBEVのメーカーではないが、以前から安全装備に力を入れており、BEVの先進テクノロジーとも親和性が高い。
しかもボルボのBEVには、コンパクトな車種が用意され、2024年モデルの価格はC40リチャージが699万〜739万円、XC40リチャージは679万〜719万円とされる。経済産業省の補助金も65万円が交付されるから、実質600万円少々でBEVが手に入る。決して安いクルマではないが、XC60のベーシックなモデルでも700万円を超えることを考えると、C40やXC40のリチャージには相対的な割安感が生じている。
また、メルセデスベンツやBMWは、運転の楽しさが強調されたブランドで、エンジン駆動の印象も強い。その点でボルボは、ドイツ車のような走りのイメージにも染まっていないから、近年のデザインを含めたブランド変革の成功と相まってBEVとの親和性も強まった。
これに比べると、日本車はBEVの印象が薄い。トヨタはハイブリッドが強烈で燃費性能も優れているから、損得勘定でいえばユーザーにBEVを選ぶ現実的な必要性を感じさせない。車種もbZ4X程度と少ない。ホンダもハイブリッドのe:HEVを前面に押し出している。
ダイハツやスズキはもともと軽自動車のメーカーとされ、ボディをコンパクトに抑え、エンジン排気量を660ccにすることで二酸化炭素の排出量を抑えている。
日本では総世帯数の約40%が集合住宅に住み、現実問題として自宅に充電設備を設置しにくい。その結果、BEVは所有しにくく、なおかつ日本メーカーの商品開発も後送りにしてきたから、輸入車が隙を突いて品ぞろえを充実させてきた。輸入車メーカーにとって、BEVは日本市場に入り込むうえで、魅力的な突破口になっている。日本車メーカーも、安穏としていられる状況ではなくなってきた。