エグゼクティブラウンジといえど走りキャラは健在
次に試乗したヴェルファイアはエグゼクティブラウンジのハイブリッド、E-Fourモデルだ。価格的には892万円と、新型アルヴェルでもっとも高価なモデルとなる。ちなみにこの試乗車はブラックボディにスモークメッキの巨大グリルを合わせているのだが、その顔つきの迫力はただものではない。さらに言えば、ブラックボディ+漆黒メッキのZプレミアの顔、全身真っ黒な佇まいは、カスタムカー真っ青なほどの”ワルさ”の持ち主と言っていい。
そんなヴェルファイアのエグゼクティブラウンジE-Fourの走りは、パワー感では70kg軽量かつパワフルさが売りのガソリンターボには敵わないものの、4WDを生かした重厚な上質感と、安定感、直進性の良さ、そしてもちろんハイブリッドならではの燃費の良さ(WLTCモードはガソリンターボの2WDの10.3km/Lに対して4WDでも16.5km/L)がポイント。
しかし、アルヴェルとして最上級のエグゼクティブラウンジシートを備えたグレードでありながら、乗り味は決してアルファード寄りにはなっていない。19インチタイヤを履き、フロントパフォーマンスブレードや専用チューニングサスペンションが奢られているから当然と言えば当然で、徹底したフラット感が持ち味だが、じつは先に乗ったZプレミアの2WDモデルより、路面、段差によっては1/2列目席ともに硬く感じられるシーンがあったのだ。
その理由は明快で、アルファード同様で、このヴェルファイアでもE-Fourのようなさらなる重量級グレードのサスペンションは、車重増に合わせて一段と締め上げられているからである。
ごく一部の路面、段差で硬さを感じさせる一方、ヴェルファイアのE-Fourモデルは、驚くべきマナーを身に着けていた。それはE-Four=四輪駆動を生かしたカーブ、レーンチェンジ時の特筆すべき重心の高さを感じさせない安定感の高さに伴う、極めて水平感覚の車両の動きだ。ドライバーであればまるでスポーティカーのような、水すまし感覚の挙動に驚かされ、「気持ちいい」のひと言になるだろうし、後席で寛ぐ乗員であれば、レーンチェンジしたことに気づかないほど……というハイレベルなレーンチェンジをこなしてくれるのである。
アルファードに対してより重厚でしっかりとした運転感覚を堪能させてくれるヴェルファイアだが、アルファードのF-Four、ヴェルファイアの2WD、E-Fourを乗り比べてみると、もっとも車体の大きさを感じさせない、巨体のハイエンドミニバンにしてステアリングの応答性の良さや操縦性の人車一体感を感じさせてくれたのはヴェルファイアのほう、ということになる。
このリポートはあくまで一般ユーザー、ファミリーユーザー向けに発信しているのだが、筆者の個人的印象を述べさせてもらえば、価格、装備を含め、アルファードなら意外にいい乗り味を示す18インチタイヤ装着のハイブリッドZのE-Four、ヴェルファイアならガソリンターボのZプレミア4WDに惹かれる。エグゼクティブラウンジの素晴らしさを認めつつも、さすがに850万円オーバーでは高嶺の花すぎるが……。