【試乗】新型アルファードの2列目席は豪華さと快適さがヤバい! 走りも大幅進化したが一般道では少し気になる点もアリ (2/2ページ)

特等席である2列めの乗り心地も快適そのもの

 つぎに、エグゼクティブラウンジの特等席と言える2列目エグゼクティブラウンジシートの居住性、乗り心地についてもリポートしたい。

 先代のエグゼクティブラウンジシート、エグゼクティブパワーシートは、その豪華さの半面、重心が高く、重量もあり、なおかつレールによってスライドさせなければならず、シート振動、とくにひじかけの蓋部分のビリビリした振動が気になったものだ。たとえば、肘をアームレストに置いてノートに文字を書く場面では、文字がブレてきれいに書けなかった経験があった。シート自体の振動については、背もたれ部分に振動吸収ダンパーを入れるなどして対処していたはずだが、アームレストの蓋の振動を消すことは、2017年12月の先代ビッグチェンジの際も難しかったと、当時の開発陣から聞いている。

 が、この新型はそうした先代のネガを徹底的に排除している。シート振動の元凶はボディだから、フロアのオープンカーに採用されるV字ブレース、スライドドア部分の大開口部分のストレートロッカー面積の拡大、先代の5倍の約50mにおよぶ構造用接着剤(2列目席足元の高減衰接着剤含む)を使用。それだけでもすごいのだが、さらにシートとシートレールの間に前後ふたつのゴムブッシュを固定し、住宅で言うところの”免震構造”シートとしているのである。結果、先代比約50%増しのボディ剛性を実現するとともに、シート振動を3分の1に低減しているのだという。

 実際に、快適で便利すぎる付帯装備テンコ盛りのプレミアムナッパレザー表皮で電動オットマン、テーブル、電動オットマン&アームレストにも及ぶヒーター、リフレッシュ&ベンチレーション機能なども備わる2列目席エグゼクティブラウンジシートに乗車してみると、乗り心地はミニバンとしてはこれ以上望めないほどの快適感に包まれる。具体的には、背もたれとアームレスト内部に低反発クッションを用いられ、背中のソフトに包み込まれるような分厚いクッション感に感動できるとともに、肝心のアームレストの微振動がほぼ解消されていたのである(ついにやりましたね!)。

 試しに走行中にノートに文字を書いてみたのだが、ブレることなく書くことができた。メモをノートPCやスマホに収めることが当たり前の時代とはいえ、VIPのなかには依然、重要なことは”黒革の手帳”に書き溜める人もいるはずで、この点に於いても大きく進化した新型アルファードのエグゼクティブラウンジシート(そこまでの対策が施されていないエグゼクティブパワーシートもOKだった)になったということだ。

 先代で、気になる人は気になっていた、ブレーキング時などでお尻が前にズレたかけ心地にしても、シート座面のクッションの改善、およびシート前端に角度を(欧州車の後席的に)やや上向きにすることで解決。これも実際に体感できた。

 もちろん、2列目席も先代とは比べ物にならないほど静か。運転席同様に、風切り音、ロードノイズともに見事に抑えられている。ただ、エンジン主体の走行になると、エンジンノイズの透過音(160Hz付近の低域ノイズ)は2列目席にも届きやすい。それは、EV走行時の素晴らしい静かさとの差がもたらす感覚ではある。非HVモデルでは、終始、抑えられたエンジン音が耳に届くものの、EV走行の静かさがないぶん、エンジンノイズがさほど気にならなくなる、とも言える。

 と、極上の居心地、かけ心地をもたらしてくれるエグゼクティブラウンジシートだが、運転席同様に、特定の段差での突き上げ感は、あるにはある。この点も、サスペンションが、重量がかさむE-Fourモデルほど締め上げられていない2WDモデルだと、突き上げ感がややマイルドになることを確認している。

 つぎに乗ったのは、アルファードのハイブリッドZ、E-Fourモデルだ。エグゼクティブラウンジと比べ、タイヤは18インチとなり、周波数感応型ショックアブソーバーやアクティブノイズコントロールなどが省かれるとともに、2列目席はエグゼクティブパワーシート(手動スライド&パワーリクライニング)となるグレードだ。車重は2220kgと、エグゼクティブラウンジより70kg軽量になる。

 なるほど、走ってみると、走行中の静粛性はエグゼクティブラウンジにやや劣るように感じられるものの、走りのテイストはエグゼクティブラウンジよりステアリングフィール、乗り心地ともに引き締まった印象で、ドライバーズカーとしてはまったく遜色なし。ステアリングの応答性も高まり、サイズを感じにくい操縦性さえ示してくれるのだ。基本的なボディ、フロアの剛性の高さはこのZグレードにもいかんなく発揮されているということだろう。

 ハイブリッドのE-Fourで642万円という、同エグゼクティブラウンジに対して230万円も安い価格も大いに魅力的に思えたのも本当だ。ハイエンドミニバンを望む一般ユーザー(ファミリーユーザー)にとっては、2-3列目席スルーが可能になる使い勝手を含め、最新のトヨタセーフティセンス、ナビを始め1/2列目席快適温熱&ベンチレーションシート、スーパーロングオーバーヘッドコンソール、AC100V/1500Wコンセントなどまで標準で備わる装備類の充実度など、Zグレードでも十分すぎると断言できる(そもそもZは上位2番目のグレードである)。

 いずれにしても、新型アルファードは、前席、2列目席ともに、セダン、サルーンでは得られない大空間を持つ究極の移動空間の完成形であることは間違いない。2WDとE-Fourの価格差は22万円。走りの質感、上級感を優先するなら、AC100V/1500Wコンセントも用意されるハイブリッドのE-Fourが優位だ。22万円以上の価値がある。

 そんな驚愕の進化を遂げたアルファードに対して、ある意味”復活”したヴェルファイアは、まったく別物のキャラクターのドライバーズカーに仕立てられている点にも注目だ。19インチスポーツタイヤのみを履くヴェルファイアの、アルファードに設定されないガソリンターボモデル、279馬力、43.8kg-mを誇るZプレミアの試乗記(もちろんHVモデルも)は、改めてお伝えしたい。


青山尚暉 AOYAMA NAOKI

2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ゴルフヴァリアント
趣味
スニーカー、バッグ、帽子の蒐集、車内の計測
好きな有名人
Yuming

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