この記事をまとめると
■新型トヨタ・アルファードに試乗した
■先代モデルのウィークポイントであった2列目席上級キャプテンシートの微振動は解消
■ゆったり快適な乗り心地にフワフワした落ち着かない印象はない
ショーファーカーとして的を射たセッティングのアルファード
いま、日本の高級車、ミニバンの世界で話題沸騰しているのは、間違いなく新型アルファードの登場だろう。すでにこのWEB CARTOPでは、新型アルファードの概要、パッケージ、乗降、居住性にかかわるリポートを公開しているが、今回はそれに次ぐ、新型アルファードの試乗記をお届けしたい。
とくに、先代モデルで筆者が数少ないウィークポイントだと指摘していた2列目席上級キャプテンシートの微振動と、ノア&ヴォクシーに先を越されてしまっていた先進運転支援機能=トヨタセーフティセンスの進化についても徹底的に報告する。
ここで改めて新型アルファードのラインアップを紹介すると、最上級グレードのエグゼクティブラウンジと、先代では2番目のグレードに位置づけられたZの2種類。もっとも豪華なエグゼクティブラウンジシートを備えるエグゼクティブラウンジは、2.5リッターエンジン+モーターのハイブリッドのみだが、E-Fourと呼ばれる4WDと、先代にはなかった2WDが揃う。Zグレードはエグゼクティブパワーシートを備え、2.5リッターエンジン+モーターのハイブリッドのE-Fourと2WDに加え、2.5リッターのガソリンエンジンモデルが用意されている。シートレイアウトは2列目席キャプテンシートの7人乗りのみとなる。
まず乗ったのは、先代同様、ハイエンドミニバンを望む一般ユーザーはもちろん、VIP、会社役員、芸能人のショーファーカー、移動手段としても使われてきた、アルファードの最上級グレード、ハイブリッド車のみとなり、E-Fourと呼ばれる4WDに加え、先代HEVになかった2WDを用意する、850万円からのエグゼクティブラウンジ、そのE-Fourモデル(872万円)である。
エグゼクティブラウンジのタイヤは専用開発の225/65R17サイズが標準。TNGA、GA-Kプラットフォームには大空間ボディの快適性に直結する剛性を高めるためのさまざまなボディ補強が施され、足まわりには周波数感応型ショックアブソーバーが奢られるほか、静粛性を高めるためにフロントドアガラス、クォーターウインドウガラス、スライドドアガラスに遮音性に優れたガラスを装備。さらに、スピーカーから逆位相の音を出して特定の周波数のノイズを殺すアクティブノイズキャンセラーも備わっているのが特徴だ。
運転席に乗り込めば、前席はダブルAピラーによって斜め前方の視界に優れ、シートはかけ心地の良さはもちろん、意外なほどホールド性に優れている印象だ。運転席は14インチワイドディスプレイを頂点とするインパネから、幅広のセンターコンソールに連続するデザインはさすがに高級感に溢れているが、12.3インチのTFTカラーメーター+マルチインフォメーションディスプレイは、言ってみれば見慣れた旧来デザイン。新型アルファードのインテリア全体のデザイン、後席のプライベートジェット感覚ある先進感からすれば、もっと大きく、先進的にしてほしかったという印象はある(前席はクルーザーのイメージだとか)。
ステアリング角度が5度立てられたため、より乗用車、サルーン感覚の運転感覚が得られることに満足し、ストロングハイブリッドモデルだから出足はもちろんEV走行で、静かに、滑らかに走り出す。トヨタのHVなら、出足が静かでスムースなのは当たり前だが、とくに静かさについてはレベルが違う。エグゼクティブラウンジならではの遮音ガラスを含む徹底した遮音、防音対策が功を奏しているというわけだ。
前席の乗り心地はゆったり快適。と言ってもフワフワした落ち着かない乗り心地では決してない。良路のちょっとした段差、うねりでは、路面からの入力をしなやかに受け流す……というイメージだ。
2.5リッターエンジン+2モーターのハイブリッドシステムは、エンジンが190馬力/24.1kg-m、フロントモーター182馬力/27.5kg-m、リヤモーター54馬力/12.3kg-mというスペック。先代のHEVのエンジン152馬力/21.0kg-m、フロントモーター143馬力/27.5kg-m、リヤモーター68馬力/14.2kg-mに対して、エンジンとフロントモーターの出力が大きく向上し、システム最高出力は先代の197馬力から一気に250馬力へと高められているのだ。
が、出足の加速感、トルク感に強烈さはない。あくまで、エグゼクティブラウンジに相応しい、ジェントルかつ乗員に不快感を与えない、唐突感のないスムースな加速感(力)が身上だ。このようなアクセルレスポンスはアルファードのようなクルマに相応しいと思える。
操縦性は安心感あるもので、パワーステアリングの操舵フィールはしっかりスムース。応答性自体は穏やかに躾けられている。これもショーファーカーとして的を得たセッティングと言えるだろう。キビキビしすぎれば、そもそも重心が高いクルマだけに、乗員に不快な揺れを感じさせることになる。
感心したのは交差点、カーブ、高速レーンチェンジなどでの前後左右の姿勢変化の少なさだ。前席のシートの見た目以上の上半身のホールド感の良さと合わせ、運転にストレスを感じさせないドライブフィールが支配するところだった。
ただし、良路では魔法のカーペットの上を滑走するような、モーターを使った縦揺れを制御しフラット感に貢献するばね上制振制御付きサスペンションによるフラットかつゆったりとした極上の乗り心地を提供してくれる一方、試乗した横浜みなとみらいの一般道、みなとみらいから首都高に乗って大黒ふ頭PAに至る特定の段差では、やや唐突な突き上げが認められたほか、アクセルを踏み込むようなシーンでは、160Hz付近の低域音のエンジンノイズがキャビンへと侵入することが気になった。
その原因はと言えば、じつはアルファードでもエグゼクティブラウンジのE-Fourは2290kgと、現時点でもっとも重いアルファードとなり、新設定された同2WDより60kg重く、アルファードでもっとも軽量なZのガソリン2WDに対しては230kgも重いこと。そこで、アルファードのエグゼクティブラウンジでも重量がかさむモデルは、前後サスペンションともに重量に配慮して硬めにセッティングされているため、特定の段差などではやや強めの突き上げに見舞われることもある……ということだ。ちなみに、同コースをアルファードのエグゼクティブラウンジ、2WDモデルで試乗した際は、乗り心地はよりゆったりとしたタッチになり、同じ段差でも突き上げ感は微小だった。