この記事をまとめると
■新型トヨタ・アルファード/ヴェルファイアに青山尚暉さんが試乗した
■まずは走り出す前に、両車の概要とグレードごとの違いなどを確認
■大空間サルーンとしての完成度は機能性・快適性・安全性能・運転支援機能についてもはや完璧に近い
ついに新型アルヴェルを徹底チェックできるときがやってきた
2023年6月21日、ついに約8年ぶりのフルモデルチェンジを果たしたトヨタの、いや、現時点で国内最上級ミニバン、先代の言葉を借りれば「大空間サルーン」と言うべき4代目アルファードと3代目ヴェルファイアが登場した。アルファードがこのジャンルのハイエンドミニバンを独走している事実は周知のとおりだが、今回、アルファードとヴェルファイアの差別化が、デザインだけでなく、キャラクター、動的性能にまで拡大されたのが大きな特徴だ。
ボディサイズは全長4995×全幅1850×全高1935~1945mm、ホイールベース3000mm。つまり、先代比で全長が45~60mm長くなっただけで、車幅、ホイールベースは不変。全高はむしろ5~15mm(タイヤサイズによる)低くなっている。全長拡大はともかく、先代ユーザーが違和感なく乗れる、また駐車性にもこだわったボディサイズが維持されている。
国産ハイエンドミニバンを望む一般ユーザーはもちろん、会社役員、VIPや芸能人芸の愛用者さえ満足させる威風堂々としたバランスのいいスタイリングはさらに進化。とくに巨大なフロントグリルを逆スラントさせたことで、より堂々とした、アグレッシブとも言える顔つきを実現している。
ちなみにヴェルファイアのフロントグリルは厳密には2タイプあり、スモークメッキ(エグゼクティブラウンジ)と漆黒メッキ(Zプレミア)がグレードによって使い分けられている。ブラックボディに漆黒メッキの組み合わせの迫力はただものではない印象になる!?
プラットフォームは一新され、トヨタ最新のTNGA、GA-Kプラットフォームを採用。骨格が太いため、室内空間的には不利になるプラットフォーム、骨組みで、そのままだと運転席が70mm後退してしまうところを、着座位置の高さを利用し、ペダルをなるべく前に出すことで25mmの後退に抑えているという。結果、ステアリング角度を5度立てつつ、1〜3列目席間距離+10mm、2〜3列目席間距離+5mmという、先代同等の居住空間が実現されているという(筆者による実測は後述)。
現時点のパワーユニットは、アルファードが2.5リッターガソリン(182馬力/24.0kg-m)および2.5リッターエンジン+2モーターのハイブリッド(エンジン190馬力/24.1kg-m、Fモーター182馬力/27.5kg-m[2WD]、リヤモーター54馬力/12.3kg-m[4WD])の2種類。それぞれに2WD(先代のHVはE-Four=4WDのみだった)と4WD/E-Fourが用意されている。
一方で今回は、走りにまでよりスポーティでアグレッシブなキャラクターを与えたヴェルファイアは、アルファードにある2.5リッターガソリンはなく、2.5リッターエンジン+2モーターのハイブリッドと、アルファードにないハイオクガソリン仕様の2.4リッターガソリンターボ(279馬力/43.8kg-m+8速AT)が用意されている。なお、ハイブリッドのシステム出力は先代の197馬力から250馬力へと、大幅にアップしている。
グレードはアルファードがエグゼクティブラウンジとZ、ヴェルファイアはエグゼクティブラウンジとZプレミアが揃う(すべて上級グレード)。組み合わされるタイヤにも大いなるこだわりがある。すべて専用開発であり、ショーファーカーとしての需要も多いアルファードのエグゼクティブラウンジは225/65R17(空気圧230kgf/cm2)、アルファードのZは225/60R18(空気圧240kgf/cm2)。
が、ヴェルファイアはエグゼクティブラウンジ、Zプレミアを問わず、225/55R19(空気圧260kgf/cm2)の大径スポーツタイヤが装着され、足まわりやパワーステアリングまで専用チューニングが施されているのだ。アルファードとヴェルファイアのキャラクター分け、差別化は、先代とは別次元ということだ。
細かい話をすれば、このあと報告する試乗記で詳細に触れるシャシーの徹底強化は当然として、サスペンションのセッティングも多種多様。17/19インチタイヤ装着車に路面から伝わる振動の周波数に応じて減衰力を機械的に可変させる周波数感応型ショックアブソーバーを設定したほか、エグゼクティブラウンジのような重量級グレード(アルファードのHVエグゼクティブラウンジとガソリンZの車重差は170kg)の足はさらにショックアブソーバーとバネを強化しているという。
VIPのショーファーカー、大空間サルーンとして使われることも多いアルファードだけに、VIP席となる2列目席の仕立ても大きく進化。プライベートジェットをイメージしたその空間は、従来、天井左右に配置、点在していた照明、各種スイッチ、後席エアコン吹き出し口などの機能をルーフ中央にある、新開発されたスーパーロングオーバーヘッドコンソールに集約。
エグゼクティブラウンジの場合は左右各席にあるスマホサイズの取り外し可能なリヤマルチオペレーションパネルによって、多彩な機能を手元で(スーパーロングオーバーヘッドコンソール側などでもOK)、指先ひとつで操作できるようになっている(反対側の操作も可能)。
そして、先代の上級キャプテンシートで気になった微振動の解消策も目玉(先代比で3分の1とか)。ボディ剛性そのものの向上は先代比50%増し。フロアにV字ブレース、2種類の構造用接着剤を用い(先代の5倍、延べ50m分)、シートレールとシートの間には防振ゴムブッシュが前後内側2か所に置かれたほか、シート、ひじ掛けにも低反発ウレタンが入っているのだから徹底している(先代の背もたれ部分の防振ダンパーは廃止)。