ビッグモーター事件は「直接取引のない」ユーザーも被害者! この先も広がり続ける「不正の余波」 (2/2ページ)

あまりの悪質っぷりに保険会社も動き始めた

 また、車検においても、必要な検査の一部を行わずに整備記録を改ざんし、適合証を交付するなどの不正が行われていました。検査にかかる時間を短縮し、より多くの検査をこなすためだったと見られています。

 そしてもうひとつ、あちこちから指摘されている街路樹問題。これは、ビッグモーターの店舗前の植え込みの草花だけが枯れていたり、街路樹が伐採されている報告が相次いでいるもので、調査によって社員の手で除草剤が撒かれたという事実が発覚。自治体による土壌調査でも、土から除草剤の成分が検出されたとの報告があることがわかりました。現時点で理由は明らかにされていませんが、店舗内や周辺の整理整頓・整備についての厳しいルールが存在し、それを実行するには除草剤を撒く以外にやりようがない状態だったり、看板や展示車両を見やすくするためだったのではないかと見られています。

 さて、このビッグモーターの不祥事では、損保会社から出向していた社員がどこまでこれらの不正行為を認識していたのか。見て見ぬふりをしていたのか、あるいは手を組んで不正に加担していたのではないか。この点も大きな問題となっています。社員を出向させていたのは「損害保険ジャパン」「東京海上日動火災保険」「三井住友海上火災保険」の3社で、鈴木金融担当大臣は7月25日の会見で「出向者が果たしていた役割や、ビッグモーター社と損害保険会社との関係について事実確認を行い、損害保険会社についても保険の契約者保護に関する問題が認められた場合には、法令に基づいて厳正に対応したい」と話し、調査中であることを明らかにしています。

 また、そのほかビッグモーターと保険代理店契約を結んでいたあいおいニッセイ同和、共栄火災、AIG、日新火災の4社についても、金融庁が7月31日に報告徴求命令を出しました。これによって取引の実態解明とともに、契約者保護の観点から問題がなかったかどうか、調べを進めることになっています。

 このビッグモーターの問題は、実際に取引に関わったユーザーだけが被害者なのではなく、保険加入者が支払った保険料がこうした不正請求に支払われていたことによって、知らないうちに私たち自動車ユーザーにも影響を及ぼしていた可能性があるところに、深い闇の広がりを感じます。また、ビッグモーターは氷山の一角で、ほかにも同様の不正をおこなっている中古車販売会社があるのではないかという疑惑も拭えず、同業他社が受ける風評被害のような影響もあるでしょう。

 いずれにしてもすべての事実が明るみに出て、被害者には相応の償いがゆき渡り、適正な業務が遂行される環境に改められることを願うばかりです。


まるも亜希子 MARUMO AKIKO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
MINIクロスオーバー/スズキ・ジムニー
趣味
サプライズ、読書、ホームパーティ、神社仏閣めぐり
好きな有名人
松田聖子、原田マハ、チョコレートプラネット

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