事故が減るのはいいことだがディーラーの経営は苦しくなる!
ただでさえ新車販売による利益はたかがしれていたのだが、最近の部材費高騰などにより、メーカー希望小売価格自体を単純に値上げしていない車種であっても、メーカーからディーラーへの卸売り価格はすでに広範にわたって値上げとなっているようなので、さらに利益が望めなくなっている。
そのため、車検などの整備で稼ごうと思うのだが、こちらはドライバーの高齢化が進み、クルマの所有をやめる人も続出し、車検入庫も目立って減少傾向にあるとのこと。それでは板金修理で、となっても、前述したような理由から入庫数も減少傾向となるなか、そもそも板金工場における人不足、とくに熟練工が引退するなどもあり減少傾向が顕著となっている。
大昔には、各ディーラーでは外注先となる板金修理専門業者を「松竹梅」といった感じで複数確保しており、「時短なら梅、仕上げなら松」といったぐらいに振り分けられるほど、板金修理入庫も多かったのである。
「ちなみに、1980年代後半から90年代前半あたりでは、ホンダ車の板金入庫を請けているところが技術的にも高いとされ奪い合いになっていたそうです。ほかのメーカーに比べ造形が複雑なモデルがホンダ車には多かったからだそうです」(事情通)。
ちなみに筆者の経験や現地で聞いた話を総合すると、アメリカでそれほど裕福ではない地域で、高年式の新車が衝突事故を起こしても板金修理をしなかったり、バンパーが落ちてなくなってもそのままで乗っているケースが多くなってくると、「バブル景気がそろそろ崩壊する指標」のひとつになるともいわれている。
新車を買うにあたっては、ローンを組むことで大金を用意することなく買える。バブル景気が過熱してくると、ローン審査も甘くなり、普段は与信の通らないような所得水準の人たちでも、ローン審査が通って新車自体は購入できることになる。しかし、そもそも現金はそれほど持ち合わせていないので、いざ事故などを起こすと修理代金が払えずにそのまま乗っているとのことである。
「ローンも支払いが滞るケースも多いようですが、クルマを回収しても“焼石に水”状態になり回収不能も多発するそうです」(事情通)。
新型コロナウイルス感染拡大直前の頃は、業界関係者でも背景がよくわからないまま新車がよく売れていたとのこと。高所得者から順に新車が売れていくなか、もうこれ以上売り先がないといった状態になると、ローンの審査条件を緩和するなどして、支払い不能になるリスクを覚悟して、所得のそれほど高くない層まで突っ走るブランド系ディーラーが出てくるということである。