中古車価格は? 保険が扱えなくなる? ビッグモーターの不正が中古車業界に与える影響を予測した (2/2ページ)

クルマ屋が自動車保険を扱ってる仕組みにテコ入れが入る可能性

 あくまでウワサ話レベルではあるが、金融庁は自動車販売店・修理工場が自動車保険を扱うのを制限することを検討しているという報道が出ているのは目にしたことがあるだろう。

 車両保険(任意保険のひとつ)を使って修理する場合に、ビッグモーターが顧客のクルマを破損させることで修理箇所を増やして売り上げを伸ばしていたというのは、今回の問題が明るみに出る発端のひとつだが、このスキームにおいて、ユーザーは目先の負担は増えない。

 等級が下がることで将来的な保険料支払い額が増えるというデメリットはあるが、車両保険を使って修理するのであれば、その場でユーザーの財布からお金が出ていくことはないからだ。

 ただし、修理費用が嵩むということはその支払いを担う損害保険会社からするとデメリットで、ビッグモーターの行為を損害保険各社が見逃していたというのは不思議な話。ただし、ビッグモーターが保険代理店としては大口顧客だったゆえに厳しい対応ができなかったという見方も報じられている。

 それがビッグモーター問題の起きた背景にあるとすれば、自動車販売店が保険代理店を兼ねるという仕組みにこそ元凶があるといえる。

 自動車保険には、義務化されている自賠責保険(人身事故のみ対応)と、物損事故や自賠責保険を超えた部分をカバーする任意で入る自動車保険がある。

 自賠責保険については、ナンバーをつける際や車検のときに加入していることが必須となるため、その領域については自動車販売店や修理工場が保険代理店を兼ねるのは合理的だが、任意保険については、代理店機能を分離することで、今回のような問題が起きづらくなるのでは? というのが政府筋の思惑といえそうだ。

 現在でもネット系の自動車保険を利用するなど、自動車販売店とは関係ないルートで任意保険に加入しているユーザーもいるため、自動車販売店で任意保険を取り扱えなくなったとしてもユーザーは困らないといえる。

 しかしながら、販売店サイドでいえば、保険販売による各種売り上げが減ってしまう。ウワサ通りに、販売店で任意保険が扱えなくなれば死活問題となること必至といえる。

 はたして自動車販売店と保険代理店の分離問題はどうなるのか、自動車業界の商慣習に関する大変革ともなり得るだけに注視すべきといえそうだ。


山本晋也 SHINYA YAMAMOTO

自動車コラムニスト

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