バレなければ何でもアリだった悪徳業者
本物なのかレプリカなのか
伝説的なプレミアムモデルを語ってレプリカを売りつけるというのは、個人的にもっとも悪質だと考えます。まず、信用して大金を払ったオーナーに失礼だし、これを信じて取材したメディア、さらにはその読者まで騙されるわけですからね。そして、レプリカでなく正真正銘の本物を持っているオーナーだって「おいおい、ウチのは本物だろうな」と困惑することだってあるでしょう。すると、そのクルマを売った業者だってのほほんとはしていられません。改めて本物である証拠を集めたり、調べたり、大変な労力が発生すること間違いないのですから。
こうした精巧なレプリカづくりには、どうやら専門チームが存在するようです。たとえば、ポルシェなどはミッレ・ミリア出場時に雇っていたイタリアの板金チームがいまだに356やらカレラアバルトの木型を保存(あるいは新造)していたりします。とはいえ、彼らは純粋な職人なので(と信じたいものです)新たなボディを作る際にも「レプリカ」として作っているはず。ここに精巧な部品ナンバーを捏造してくっつけているのが憎むべき確信犯。ここまでやられると、自動車専門オークショニアでさえ判断は難しくなるといいます。
クルマの世界だけでなく、あらゆる芸術品でも見られるケースですが、本物に対して失礼千万、ほんと絶滅してほしいものです!
水没ならぬ砂没車
水没車にまつわるトラブルの大半は購入前に調べることで防ぐことができるかと。湿気の痕跡やダメージは玄人でなくとも、タマ数を見ていれば見分けるコツもつかめるはず。ですが、砂に埋まっていたカス車を見分けるのは「まあまあ厄介」なものだそうです。
現在のドバイは一大リゾートとして世界にその名を馳せてはいるものの、1980年代までは中東の砂漠、トランジットで仕方なく立ち寄るような国だったはず。とはいえ、オイルダラーは確実に存在していたので、ロールスロイスやフェラーリはゴロゴロしていて、その頃の日本で出まわっていた中古並行車には「ドバイ物」が少なからずあったのです。
ドバイから砂埃をかぶって上陸したクルマでも、バブルの恩恵でたいていのタマが売れ残ることなく捌かれていったのですが、とりわけテスタロッサは入庫する前の情報だけで買い手がつくほどの人気。ブローカーの真似事をしていた筆者も、そんなタマを探し出しては売りつけていたのですが、一度だけ大失敗をしでかしました。
ある朝、ドアチャイムが鳴ったので誰かとのぞき窓に目を凝らすと「緑の腕章」をつけた警察官が数人、ドアの外に待ち構えていたのです。いうまでもなく、腕章は「検挙行動」の証しですから、眠気もふっとび大慌て。手短にお伝えすると、筆者がさばいたテスタロッサのサイドポンツーンから「白い粉」が発見された。ついては売主たる筆者を尿検査ともども聴取をしたいのだが「任意同行」してもらえぬか、とのこと。
玄関先で悪あがきはしたものの結局は、某警察署で入念な取り調べということに。しかしながら、結果は「シロ」当たり前といえば、当たり前ですが、白い粉と警察が言ってたのはドバイの粉のように細やかで滑らかな砂だったというオチ。
これをお読みの皆様なら、まさか中古並行などという得体のしれないクルマに手は出さないかと思いますが、いまでも稀に扱っている業者もいるようです。怖いもの見たさで手を出しますと、腕章付が現れるかもしれませんので、くれぐれもお気を付けくださいね(笑)。