この記事をまとめると
■ライター陣に銅像を建てたいクルマを聞く本連載
■まるも亜希子さんが選んだのはスズキ・ジムニー
■1970年に誕生した世界最小のクロスカントリー4WDだ
スズキにしか作れなかった希少な1台!
銅像を建てたいほど凄いと思う1台は、世界中探してもほかにない、世界最小のクロスカントリー4WDであるスズキ・ジムニーです。1970年に誕生した初代ジムニーは、強靭なラダーフレーム構造とパートタイム4WDを採用し、わずか360ccのエンジンを搭載しながら、27.5度という脅威的な登坂能力を備えていました。米軍の軍用車をルーツとするジープをぎゅっと軽規格に凝縮したような本格4WDは、スズキにしか作れなかった希少な1台です。
当初は3人乗りの幌仕様のみでしたが、すぐにハードトップ仕様も登場。ここからジムニーは、いまでは兄貴分となる登録車版のジムニーシエラを含め、日本のみならず世界194カ国で発売されるまでになる快進撃がスタートしていきます。
ジムニーの凄さその1は、小さくて軽く、悪路走破性に優れるというところでしょう。ジープ・ラングラーやトヨタ・ランドクルーザー、三菱パジェロといった、世界でも指折りの悪路走破性を誇るクルマはありますが、いくらパワーがジムニーとは段違いでも、ボディの大きさと重さが仇になるシーンはあるものです。
以前、伊豆モビリティランドというダートコースにあった、岩が高く積まれているガレ場で見た光景は忘れられません。巨体の四駆たちが次々と脱落していくなか、ジムニーだけがヒョイヒョイと四つ足動物のように岩を登り、頂上を極めていたのです。また、千葉のダートコースでは、路面がぬかるんだ急斜面で重いクルマたちはズブズブとタイヤが路面に埋まっていくなか、ジムニーは軽々と駆け登っていく様子も圧巻でした。
そして、山菜取りをするときのような細い山道やけもの道でも入っていけたり、積雪などによってすれ違いが困難な場所など、ボデイの小ささが役に立つシーンは、日本でもたくさんあるものです。
ジムニーの凄さその2は、軽自動車なのにトラックでさえ牽引してしまう底力でしょう。昨今のSUVは多くがフルタイム4WDというシステムを採用していますが、ジムニーは頑なにパートタイム4WD。これはトランスミッションのほかに、トランスファーという副変速機を備えており、いつもより強力な駆動力を必要とするときに使うと、まるでパワーが一段アップしたようになるところが特徴です。急な上り坂で力が足りないときや、重いものを牽引するときなどは、このトランスファーを「4WD LOW」に入れることで、モリモリと底力が湧いてくるようになります。ちょっと、スーパーマンみたいでカッコいいですよね。
ジムニーの凄さその3は、誕生から53年になるいままで、基本的なメカニズムを変えず、コンセプトを貫いているところです。もちろん、軽自動車の規格改正や安全基準のアップデートなどに従い、必要な改良は加えつつ、設計を最適化していくことはやってきていますが、たとえば傾斜のある場所でも水平感覚が取りやすく、視界がしっかり確保できるよう、直線基調のボンネットやフロントガラスを採用。その上で、狭い場所を安全に走ったり、転回がしやすいよう、バンパー両端をえぐって取りまわしのしやすさを向上。こうした真摯な開発姿勢がジムニーの人気を支えているところもあるでしょう。
海外では「サムライ」という名前で愛されているジムニーは、まさに現代を生きる4WD界の侍にふさわしい存在。ぜひ銅像を建ててほしいものです。