エンジンあってこその「アメリカンマッスルクーペ」だろっ! もう現行型が最後かもしれない「3巨頭」を振り返る (2/2ページ)

カマロの終売で3ブランド揃い踏みが崩れる

 そんな、アメリカンマッスルクーペだが、すでにカマロが2024年モデルで現行型の生産を終了することが発表されており、これがICE(内燃機関)車としてファイナルモデルとなると噂されている(BEVで復活するとの情報あり)。

 カマロで思い出に残るのは、奥山清行氏がデザインを担当した4代目となるだろう。仕事で5.7リッターV8 OHVを搭載したZ28に試乗したのだが、直線でやや思い切りアクセルを踏むとお尻を左右に振るなど、なかなかまっすぐ走ろうとしない様子がまさにアメリカンだと感動したのを覚えている。

 コルベットは当時のモデルでもカマロに比べれば、出木杉くんのようなところもあり、個人的にはアメリカらしさに欠ける部分が気になっていたが、4代目カマロは日本人がデザインしたとは思えないその見た目も含めて、アメリカンイメージに溢れていた。

 マスタングでは4代目が印象的であった。当時はまだかなりのアメリカンブランド車が日本へも正規輸入されていた。4代目マスタングも日本でのアメリカ車としては売れ筋モデルとなっていたのだが、その4代目では309馬力を発生する、4.6リッターV8エンジンを搭載し、5速MTとなるコブラに乗る機会を得たことがある。

 ここまで大排気量で出力の高いアメリカ車を、しかもMTで運転するのは初めてなのに、乗り出したのは雨天であった。案の定スリッピーな走りで悪戦苦闘したのを覚えている。そして、まるでトラックのような硬めのフィーリングのシフト操作も新鮮なものであった。

 エンジンルームを開けると、フォードのスペシャルビークルチームが開発に携わったこともあるのか、エンジンブロックのところに“俺がこのエンジンを組みつけたボブ”みたいな直筆のサインが施されているを発見し、感慨にふけったことを覚えている。このコブラは縁があって2回ほど試乗する機会に恵まれた。

 チャレンジャーは実際に運転する機会には恵まれていないが、アメリカのオートショーにはたいてい複数台数のチャレンジャーが展示されている。標準V8搭載車のほかSRTや、さらには映画「マッドマックス」のようにエンジンがボンネットフードを突き破っているようなホットモデルまで展示されており、それぞれを入念にチェックしていまも楽しんでいる。

 アメリカンブランド車ではすでにセダンはほぼ絶滅しており、SUVかピックアップばかりとなっている。そんな状況のなか、マッスルクーペもなんとかラインアップが続いていたのだが、カマロの終売を皮切りに、マスタングもチャレンジャーも終売になるのではないかと心配である。

 SUVやピックアップトラックだけになろうとBEVが増えようと、アメリカンブランドの根底には、伝統工芸品と言ってもいいV8 OHV(フォードはOHCだけど)を搭載するアメリカンマッスルクーペのDNAが宿っていると信じている。象徴としてアメリカンマッスルクーペが残ることを期待していたが、世のなかの動きはそこまで甘くはないようである。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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