シボレー・エクスプレスだけが最後のリアルアメリカンモデル
筆者がアメリカンフルサイズバンに初めて出会ったのは、いまから35年ほど前に初めて学生旅行でアメリカを訪れた時である。東海岸のボルチモアからマイアミをめざしたのだが、手違いからマイアミ近くのフォートローダーデールの空港に降り立った。どうやってマイアミに行けばいいかわからないでいると、近くにいたアフリカ系アメリカ人のお兄さんが声をかけてきたので事情を話すと、マイアミへ向かうフォード・エコノラインのシャトルバスに乗せてくれたのである。
2列目シートの真ん中に座ると、目の前に樹脂製と記憶しているが、カバーが施され車内にはみ出たV8エンジンがあり、驚かされたのを覚えている。
その後は、アメリカのオートショー取材へ出かけ、フルサイズバンが展示してあったら、仕事をひととおり終えたあとじっくり実車に触って楽しむのが至福の時間となっていた。
筆者はいまでもアメリカンフルサイズバンとしてラインアップする、シボレー・エクスプレスを“最後のリアルアメリカンモデル”と表現している。かつてはフルサイズピックアップトラック、そしてそれをベースとするトラックシャシーベースのSUVもリアルアメリカンモデルとしてきたが、近年進化の度合いが激しく少々その印象が薄れているように思えてならない。
そもそも現行エクスプレスは2003年にデビューしているので30年ほどそのスタイルはほぼ変えていない。歴代のフルサイズバンに比べればエンジンのスモール化も進んだので、エンジンの車内へのはみだしはおとなしくなったが、標準では4.3リッターV6になるものの、6.6リッターV8がいまでもラインアップされている。
そして昔のシボレー車らしい握りの少々細いステアリングに、コラムシフトなどななど、インテリアも古き良きシボレー車らしい雰囲気に溢れている。とはいうものの、USBポートやふたつの120V電源、そしてWi-Fiなど時流に合わせた装備もしっかり採用している。
フォード・トランジットでは、BEV(バッテリー電気自動車)仕様までラインナップされるようになってきている。筆者はいつエクスプレスが販売終了になるかハラハラしているのだが、毎年イヤーモデルが更新されるたびにホッとしている。
使い勝手に問題がないから存続しているのだろうが、古き良きアメリカ車の流れを残しているエクスプレスには、できるだけ長くラインアップを続けて欲しいと思っている。