この記事をまとめると
■EVが普及すれば街が静かになりストレスも軽減する
■排出ガスがなくなれば都会の大気汚染も解消していく
■EVは脱二酸化炭素を推進するだけでなく社会をより快適な空間にする一助となる
電気自動車の普及でみんなが幸せになる!?
電気自動車(EV)が普及すると「何がよくなるのか?」と問われれば、まず街が静かになる。排気音がないのだから当然だが、たとえば都内でも、早朝の交通量が少ない時間帯に通りや街を歩くと、その静けさに驚くはずだ。エンジン車がいなくなれば、都内でもそうした静寂な環境が得られることになる。バイクもモーター駆動になれば、早朝の新聞配達など、発進停止を繰り返す2輪車のエンジン音が消え、静かな朝を迎えられる。トラックがEVになれば、スーパーマーケットなどへの搬入待ちのため路上でアイドリングする騒音が消える。
都会に住んでいると、そうした騒音は日常のことで、意識しなくなっている。しかし、いざ騒音が大幅に減れば、暮らしやすい環境が得られ、その分、無意識のうちにたまっていたストレスも減るのではないか。
また、排出ガスがなくなれば、都会の大気汚染も解消していくだろう。大気汚染によって発生する光化学スモッグは、呼吸器系などの疾患に関わる。排出ガス浄化が進んだ今日、ニュースなど報道に光化学スモッグの話題が出る機会は減っているので解消されたと思っている人が多いかもしれない。
しかし、東京都の場合、7月末の時点ですでに光化学スモッグ注意報が2度発せられ、昨年~一昨年などは年間で6~7件発せられている。晴天の猛暑続きのいま、上空は青々としていても、地平線に褐色の大気がよどんでいることがある。そこは、光化学スモッグが発生している可能性がある。注意報や警報の水準に至らなくても、褐色の空が見えたら光化学スモッグが現われているといえる。
火力発電が減り、バイクやバス、トラックなどを含めてクルマがEV化すれば、光化学スモッグの発生がゼロに近づくだろう。都会でも、清々しい空気を吸うことができるようになる。
騒音と正常な大気によってストレスが減れば、日々の暮らしがより快適になるだろう。また、EVを活用した自動運転による配車サービスが広まれば、自宅の玄関先まで迎えに来てもらうことで、高齢者や障害者の移動がより自由になり、ひとりでも移動の自立をすることもできるはずだ。そうなれば、介護の手間も減っていく。少子化の時代を迎える家族にとっても喜ばしいことではないか。
救急搬送といった場面でも、排出ガスが出ないことで建物のなかまで車両が入って行ける。救急救命室に救急車を横づけすることもできるだろう。そのためには、病院の玄関のつくり方を変える必要があるだろうが、こうした未来を創造しながらさまざまな建築の設計を進めれば、EVの利点を活かした建物を広めることもできる。
排出ガスが出ず、騒音が限定的であるということは、当たり前すぎてかえって見逃されそうだが、そこを突き詰めた社会は、新たな快適な暮らしを生み出す力を持っている。EVは、単に交通機関としての脱二酸化炭素を推進するだけでなく、社会をより快適な空間にする一助となるところが、エンジンを使うクルマとの大きな違いであり、新たな価値の創造につながる未来志向の利点なのだ。