アプリやナビが普及しても「稼ぐ」には「熟練のワザ」しかない! 「気楽な商売」と思われがちなタクシー運転手のリアル (2/2ページ)

優秀なベテランには新型車がまわってくる可能性も高い

 高層のインテリジェントビルやマンション(いわゆる高級タワマン)、大病院などでも入構規制や、1社だけ専門に入構可能など、タクシー乗り場があったとしても、どのタクシーでも客待ちできるというわけでもないのである。また、入構可能な事業者であっても、そこへ行っていい運転士を絞り込むといったこともあるだろう。

 無事故無違反だけでなく、乗客からのクレームもなくキャリアを積んできたベテラン運転士となると(タクシー会社側のウケがいい運転士かどうかもあるようだ)、まさに選ばれた運転士だけが客待ちできる場所や、ロングの上客の予約など、「おいしい仕事」がまわってくることもあり、稼ぎが安定するどころか、かなりの高収入になることも多い。

 また、これも事業者によって異なるのだが、隔日勤務(1回の出番で20時間ほど乗務)だと、1日おきに乗務しながら、公休日などを挟んで乗務シフトをローテーションするので、当然土曜や日曜なども入ってくるのだが、ベテランをおもにして乗務を平日のみ(土曜や日曜は平日より稼ぎが少ない)にしてもらうことなどもできるようである。

 また、乗務する車両も「専任車」といって、専用のタクシー車両を貸与されることがあったり、新車に最優先で乗務することができるといったこともあるようだ(新人は逆に古いクルマとなりやすい/ただし新人、ベテランに関係なく新車をまわす事業者もあれば、有料で新車などに乗ることができるシステムを設ける事業者などもあるようだ)。

 スマホアプリ配車は大手や準大手以外でも広く普及してきている。配車依頼を常に追いかけるだけで、経験年次が浅くてもいまどきは稼働台数も少ないので結構稼ぐことができるが、配車依頼先へ迎えに行き、あらかじめ入力されたり伝えられた目的地にお客を送り届けるだけなので、タクシー運転士としての経験が積めないのが泣きどころとなっている。

 事実、一般車両でそのオーナーなどが配車要請に応える「ライドシェアサービス」との競争の激しい地域(海外)では、タクシー車両でもライドシェアサービスに対応しているケースも多く、筆者の体験としては地理に不案内なタクシー運転士が目立って増えてきている。

 経験を積んでノウハウを蓄積しなくても稼げるのはいいことだが、タクシー運転士という仕事が、プロとか職人仕事といったイメージからかけ離れていくと、今度は「タクシー運転士は気軽な仕事」と、いま以上に軽んじられてしまうかもしれない。


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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渡 哲也(団長)、石原裕次郎(課長) ※故人となりますがいまも大ファンです(西部警察の聖地巡りもひとりで楽しんでおります)

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