これだけじゃ済まない「ビッグモーター事件」! 他の中古業者どころか新車ディーラーも無傷では終わらない可能性 (1/2ページ)

この記事をまとめると

■自動車保険の不正請求が問題になっているビッグモーター

■それ以前にも中古車を取り巻く環境には「グレー」な部分が多い

■中古車を扱う新車ディーラーとて無関係ではいられない可能性

いまマジメにやれば「自動車修理」では食えない時代になっている

 クルマ買い取り及び中古車販売大手のビッグモーターがメディアから集中砲火を浴びている。7月18日(金)の閣議後の記者会見で、斉藤国交(国土交通)大臣がビッグモーターの保険金不正請求問題について、ビッグモーターから事実関係の聴取を行う方針を明らかにしたのを合図にしたかのように、保険金不正請求問題に関する報道がメディアで相次ぐようになり、現在の状況に至っている。

 ただ、ある民放ニュース番組では、そこの局の解説委員が出演しコメントしていたのだが、「メーカー系ディーラーにおける車検費用が高いので、そこより安いビッグモーターのような存在が……」と解説していたが、車検はそもそも国の定めた車両検査であり、検査料や自動車重量税、自賠責保険料などの法定費用自体は運輸支局に持ち込もうが、民間車検場とも呼ばれる指定工場に持ち込んでも変わらない。

 一般的にディーラー車検(民間車検などととも呼ばれる)と呼ばれているものは、検査に加え法定点検および整備作業が加わるので、そのメニューが異なったり、工賃に差が出たりして結果的に「ディーラーに車検を出すと高い」というようなことが言われるようになっているのである。このような区別もできない人がこれみよがしに解説している姿を見て少々驚いてしまった。

 確かに、テレビやラジオコマーシャルなどを中心に積極的な宣伝活動を行い、全国的に展開している会社(ビッグモーター)が、報道にあるような保険金請求額の水増しといった不正を行っているのは、その行為自体も問題だが、さらなる社会的影響も大きいと言わざるを得ないだろう。ただ、ここで気になるのは程度の大小はあるにしても、このような保険金請求の不正問題はビッグモーターだけの問題だけなのだろうかと筆者は疑問を抱いている。

 本稿執筆中には、一部メディアが「損保各社がビッグモーターへ社員を出向させていた」と報じている。今後は損保各社の説明責任というものへの対応も注目されていくのではないだろうか。

「いまどきの損保(損害保険)会社はとくにコンプライアンスが厳しいとされています。ただ聞いてみると、保険金の請求手続きは申請する側の良心に任せているような部分も目立ち、どちらかといえば緩い印象を受けるとも聞いています。ただ、実際に不正請求が発覚し、金融庁の監査などが入るとかなり厳格なものとなって大変なことになるそうです。たとえていえば、日本の地下鉄は駅に改札がありますが、ドイツの地下鉄には改札はありません。そのため、切符を買わずに無賃乗車をしやすいともいえます。しかし、不正乗車行為が発覚すると、かなり重いペナルティが課されるとのことなので、ドイツの地下鉄などと同じようなノリといえば、わかりやすいかもしれませんね」とは事情通。

 損保会社のコンプライアンスの厳しさの一例としては、たとえばセールススタッフの家族名義での保険加入申し込みであっても、契約者本人の直筆での申請用紙への記入以外は認めず、セールススタッフが代筆して申請用紙に記入することも許されないとのことである。

 ビッグモーターのように、自動車販売業を主体とし整備部門を持つ企業であっても、修理および整備部門の収益は重要なものとなっている。中古車販売は古物販売となるので値付けの自由裁量範囲が新車よりは増すとはいえ、一般的な中古車販売ではそのレベルはたかが知れている。中古車販売の場合は名義変更などの諸手続き代行費用などで利益を稼ぐ方法もあるが、やはり点検・整備部門の利益のほうが魅力は高いようだ。

 とはいえ、自動ブレーキなどの安全運転支援デバイスを装着する車両が多くなり、板金修理入庫が減少しているのが現状。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大が起こり、行動自粛が広く要請されるようになったここ3年ほどでは、世の中ではクルマを使う機会も減ることでさらに板金修理入庫は目に見えて減ったとも聞いている。

 報道によると、ビッグモーターでは台当たりで板金修理入庫について修理代金ベースでノルマが課されているとのことだが、このようなノルマはなかなか珍しい。新型コロナウイルスの感染拡大などもあり、思うようにノルマ達成ができないなか、保険金の不正請求(水増し請求)という動きが、ビッグモーター社内で加速してしまったのかもしれない。

「報道で知る限りは、経営陣は現場へ金額ベースでのノルマは課していますが、その達成方法として保険金の不正請求など具体的な達成方法は指示していないようです。自動車販売業界内では、『現場判断でノルマ達成のひとつの手段として保険金不正請求が広がっていったのではないか』という話も出ています」(事情通)


小林敦志 ATSUSHI KOBAYASHI

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