ランニングコストに優れるEVだが急速充電の使い過ぎには要注意
では、ランニングコストとして必要な燃料代と電気代はどのようになるだろうか。話をシンプルにすべく、それぞれカタログ掲載の燃費・電費で計算してみよう。
eKクロスのターボエンジン車のWLTCモード燃費は21.5km/L。本記事執筆時点での全国ガソリン平均価格はレギュラーで174円/Lとなっている。この2つの数字から100kmを走行するのに必要なコストを計算すると、約790円となる。
一方、EVのランニングコストというのは非常に計算が難しい。もっとも電気代を抑えることが期待できるのは深夜料金が設定されているメニューで契約することだが、ここでは一般電気事業者の標準的な契約といえる従量電灯を基準に試算してみよう。
東京電力の場合、従量電灯での単価は1kWhあたり30.00円・36.60円・40.69円の3段階となっている。そしてeKクロスEVのカタログスペック(124Wh/km)からすると100kmを走行するのに消費する電力は12.4kWhとなる。中間料金の36.60円を想定すると、ランニングコストは約447円となり、ガソリンターボ比で約56%だ。
東京都在住でeKクロスEVを購入した場合のガソリンターボ車との差額は16万4600円だから、おおよそ5万kmを境にEVのほうがローコストな乗りものとなるのだ。
ちなみに、前述したように原発再稼働の有無によって従量電灯での料金は大きく異なる。たとえば関西電力の従量電灯は20.31円・25.71円・28.70円の3段階だ。こちらの中間料金を基準に計算すると、eKクロスEVが100kmを走行するのに必要な電気料金は約319円となる。ガソリンターボと比べると半額以下のランニングコストとなる。
なお、急速充電を利用した試算は非常に難しい。通常の電気料金はkWh(電力量)あたりとなるが、急速充電インフラについては利用時間ベースでの課金であり、どのくらい充電できるのかケースバイケースで異なるからだ。また会費を払っている会員とビジターでは料金も異なるのもランニングコストの算出を難しくしている。
たとえば、急速充電サービスの最大手といえるeモビリティパワーの場合、50kW以下の急速充電器のビジター利用料は1分あたり55円となっている。
eKクロスEVを50kW急速充電器につないだときに10分で7kWh程度の充電が可能だとすると、10分間(=550円)の充電で55kmほど走行できることになる。急速充電だけを利用すると100kmを走るのに必要なコストは1000円となり、ガソリンターボのほうがランニングコストを抑えられるという計算結果にもなる。
実際には、自宅での普通充電(基礎充電)と移動中の急速充電(経路充電)をミックスするだろうから、EVのランニングコストを算出することは難しい。傾向として、基礎充電メインで運用すれば同等のエンジン車よりコストは抑えられるだろうが、急速充電を多用すると想像以上にランニングコストがかかる傾向にあるといえる。