この記事をまとめると
■カーデザインの分野を専門とするライターが思い入れの強いクルマをピックアップ
■1980年代〜90年代のクルマはデザインが秀逸で著名なデザイナーが唸ったモデルもあった
■中古車で出てきたら乗り換えてもいいとまで言うほどの4台を紹介する
カーデザインの専門家が愛してやまないクルマとは
いまの愛車であるいすゞのFFジェミニ(1986年式)は、とにかくスタイルのよさと高い実用性に惚れ込んで30年近く前に購入したのですが、いまだに「これを売ってでも乗りたい!」と思わせる新型車が見当たりません。旧いなりの不便も多く、なかなか困った状況です(笑)。
ただ、「いまコレが中古で出てきたら結構心が揺れるな」、と思わせるグッドデザインがほかにもあって、それが自分にとっての「超個人的な思い入れのあるクルマ」と言えるかもしれません。今回は、そんな5ナンバーの実用コンパクトを4台紹介したいと思います。
巨匠が認めた世界一美しい? 5ナンバーセダン
まず1台目はユーノス500です。マツダの5チャンネル体制のなか、1992年に登場したセダンですが、まあ販売的には散々だったこともあり、かなりマイナーな存在ですね。
けれども、繊細な縦桟のグリルや抑揚豊かなボンネット、余計なラインのないシンプルなサイド面、下がり気味の短いノッチなど、その日本車離れした美しさは圧倒的。実際、あのジウジアーロが当時「コンパクトクラスのなかでもっとも美しいセダン」と語ったといいます。
当時のマツダは「ときめきのデザイン」を展開し、流麗なボディを数多く輩出していましたが、その多くが「緩さ」を感じさせてしまったなか、5ナンバーサイズに抑えたことが功を奏したと思われます。もちろん、それも含めて荒川健氏をはじめとした当時の若手実力派の手腕。
いまでもごく希に中古車市場で見かけますが、自分が希望するMTとなるともう絶望的な状況ですね……。
日産伝説のデザイナーが手がけた大人のセダン
2台目は初代の日産プリメーラ。クルマ好きの間では、いわゆる「901運動」による高い運動性能がよく語られますが、自分にとってはデザインの素晴らしさこそが第一の魅力です。
「パッケージ」という、耳慣れない専門用語をキャッチコピーにしたことからもわかるとおり、同車は本物の機能性と合理性を掲げました。低いノーズにハイデッキ、前進したAピラー、フラッシュサーフェス化された張りのあるボディ、プレスドアによる凝縮感の高さなど、当時の日本車の常識を覆すスタイリング。これらはデザインを統括した故・前澤義雄氏の手腕によることは有名な話です。
「初代プリメーラなら結構中古が出ているゾ」、と言われそうですが、じつは僕の超こだわりは、たった3カ月間だけ販売された特別仕様車の「2.0Te-r」。ドイツのゴールデン・ステアリングホイール賞など、内外の受賞を記念した同車は、欧州専用のスーパーレッドがカタマリ感あるボディにとんでもなく似合っているのです。
どこかのマニアがふと手放さないかなあ……なんて(笑)。