この記事をまとめると
■かつて新車ディーラーは店内をショールームとして整備し夜でも電気がついていた
■最近は店内にクルマがあるのをよく思わない人もおり簡素化されつつある
■かつては展示車を売るようなこともしていたが最近はそのような手段も減ってきている
新車の売り方やディーラーの環境が変わってきている
新車ディーラーの店舗と言えば、幹線道路道沿いに店を構え、道沿いは全面ショーウインドウになっているのが一般的。かつてはショールーム内に多くの展示車を並べ、それを通りがかる歩行者やクルマのドライバーに見てもらうことを狙っていた(夜間も照明をつけて外から展示車を見ることができるようにしていたが、いまでは世の中の節電傾向もあるのか、夜間は真っ暗になっている店舗が多い)。
つまり、デパートなどでの“ウインドウショッピング”のような効果を狙った、一種の販売促進効果を期待していたのだが……。
昨今の世の中の多様化というか価値観の変化もあり、いまどきの消費者にアンケート調査をすると、とくに女性に「店内にクルマが置いてあるのは汚らしい」といったイメージを持つ人が多いとのことである。そのため、よほど大きなショールームを構える店舗以外では、ショールーム内は展示車を置かずに商談テーブルやソファのみを置く店舗が目立ってきている。
また、ナンバープレートをつけずに展示だけ行う“展示車”というもの自体も減ってきており、いまではナンバープレートをつけ(登録[軽自動車は届け出]して公道を走ることができるようにする)、屋外の展示スペースに普段は置き、必要があれば試乗車としても活用するというスタイルが定着してきている。
あるメーカー系ディーラー関係者に聞くと、過去には展示車や試乗車、そして一般販売用などを区別せずにメーカーから新車を仕入れており、店内に展示していた車両が当該セールススタッフもわからないままに、自分が受注したお客への“納車用”に割り当てられることもあったという。
「数十年前のこととなりますが、緊急性を要する整備作業が発生し部品交換が必要となった場合、展示車に同型車があればそこから部品取りを行っていたこともあったそうです。そのため、できるセールススタッフほど、受注申告をしたあと、違和感を覚えるほど早期に発注車両が割り当てとなった場合は、展示車だった可能性を疑って入念にチェックしたそうです。また、新車を買い慣れているお客のなかには、注文書の特記事項に“展示車お断り”といったことを一筆入れていたそうです」とは事情通。
しかし、前出メーカー系ディーラー関係者に聞くと、いまではお客への販売用と展示及び試乗車用はメーカーへの発注時点で別枠扱いとなっており、ナンバープレートのついていない展示車が納車されることはないそうだ。ただ、“しかし”というレアケースも発生しているようだ。2021年から2022年にかけては新車の深刻な納期遅延が社会問題化した。その当時はお客自らが「展示車でもいいから売ってくれ」として店を訪れるケースが目立っていたとのこと。また、展示や試乗用に使うクルマについて別枠を設けていることについては、まさに昨今の納期遅延が問題化しているなかでも、展示・試乗車だけは絶やさずに定期的に供給していくためとの話も聞いている。
2022年あたりでも計画どおりとはいかないまでも、展示や試乗車の供給が続いていたそうだ。そして話を聞いたディーラーでは、試乗車は半年ほど使用したら中古車として再販する決まりとなっており、2022年当時はこの“試乗車あがり”の高年式中古車も店頭では奪い合いになっていたそうである。