衝突安全基準もクルマの規格に影響
5ナンバー車が減ってきている背景のひとつが、衝突安全基準の厳しさが増していること。日本国内の衝突安全基準はASEAN(東南アジア諸国連合) NCAPに比べても緩いといわれており、事実、前述したトヨタ車でもヤリスは欧州仕様が3ナンバー車なのに対し、日本仕様は5ナンバー車となり、そのほかの車種は国内限定もしくはほぼ国内限定モデルとなっている。スズキ・スイフトも国内仕様は5ナンバーサイズなのに対し、海外仕様は幅の広い3ナンバーサイズとなっている。つまり、世界戦略モデルとして売ろうとすると3ナンバーサイズにならざるをえない状況になっているともいえるのである。
それでも、日本国内の衝突安全基準もそれなりに厳しいものとなっている。そのなかで5ナンバーという(とくに全幅)限られたサイズのなかで衝突安全性能を高めようとすると、3ナンバー車より開発コストがかかるとも、あるメーカーのエンジニアから聞いたことがある。つまり、5ナンバーサイズにおさめるためにかかる苦労とコストは、ほかの部分で相殺せざるを得ないともいえるのだ。
欧州仕様のヤリスと国内仕様のヤリスは基本性能で結構差があるとはよく聞く話だが、日本国内でも3ナンバーサイズにしていれば、クルマの性能全体をより向上させることもできたかもしれない。ただ、パッソやルーミー、ライズはダイハツからのOEM(相手先ブランド供給)車となり、軽自動車との共用部分も多いので、開発の際のアプローチによっては話が変わることもある。
駐車場や自宅までの道路インフラの都合上、5ナンバー車でなければならないという話もあるが、筆者の自宅近くは区画整理の行き届かない細い道路が入り組んだ住宅街も多いが、アルファードなども珍しくなく、物理的に問題なければ、とくに5ナンバー車にこだわっている人ばかりという感じでもない。
筆者も30年以上カローラ・セダンを乗り継いできたので、現行モデルまでは5ナンバー車をずっと乗り続けてきたが、いざ3ナンバーとなった現行車を所有してみると、3ナンバーになったからといった使い勝手の悪さはほとんど感じることなく、むしろワイドボディとなったことにより、走行時の安定感が増したことによって確実に疲労が減ったことを感じ、暇を見ては遠乗りするようになった。
ヨーロッパの都市だって、日本並みと言えるかどうかはわからないが、市街地の道路はけっして広いとはいえないが、コンパクトカーに至るまで3ナンバー化が進んでいる。VW(フォルクスワーゲン)ポロだって、先代まで5ナンバーサイズだったが、いまでは3ナンバーサイズとなり、少し前のゴルフ並みともいえる立派なサイズとなっている。
何を優先させるべきかと言う見解の相違なのかもしれないが、日本メーカー車といっても、ASEANなど新興国専売とでもいうべきコンパクトカーは軒並み全幅の広い3ナンバーサイズになっている。全幅の広い3ナンバーのコンパクトハッチバックとなるスズキ・バレーノは、インドでは人気モデルとなっているが、日本では早々に販売終了。日本では性能よりも扱いやすいサイズ感というものがより重視されるということなのだろうか。