独創的すぎるとセールス面では不利に!?
ありそうでなかった目ウロコドア:トヨタ・ポルテ(初代)
ミニバンが普及したことで、いまでこそ電動スライドドアは珍しいものではなくなりましたが、2004年にデビューした初代ポルテの「電動スライド助手席ドア」は、筆者にとってカウンタックのドア的なインパクトがありました。なにしろ、小型車のドアは普通にヒンジでもって開くものと相場は決まっていたはずで、クルマのサイズのわりにやけに大きなドアがガバッと開く様子には新鮮な驚きがあったものです。
世の中的にユニバーサルデザインなるものが注目されはじめていましたから、トヨタが着目したのもわからないわけではありませんが、それにしてもこのドアは助手席を倒すことなく後部座席へもアプローチできるというスグレもの。こういうもの作らせたらトヨタの右に出るメーカーはありませんね。
プジョー1007は同じアイディアで、奇しくもポルテと同じ年に国内に導入されています。いずれも、開口部面積が大きいだけでなく、低床化や後部座席の足もとを広くとるなど、のちのミニバンが採用したアイディアの先駆けとなっているかと。もっとも、ポルテも1007もどういうわけか全席ともシートが小さめ(笑)。車内空間を少しでも広くしたい工夫かもしれませんが、実際に後席で心からくつろげるかというとダウト! こうした二律背反が、この手のクルマが続かなかった理由かもしれませんね。
ドア開けっぱなしでも走行OK:BMW Z1
1986年にBMWが発売した意欲的なオープンカー、Z1は超がつくほど個性的なクルマでした。とりわけ、ドアがスルスルと下降して、サイドスカットルに収納されてしまうという機構はそれまで誰も見たことがなかったはず。しかも、ドイツの法規ではドアを収納した状態での走行も認められたというぶっ飛びメカなわけです。
お察しの通り、この機構は故障しやすかったようで、BMWジャパンもだいぶ苦労したとのこと。都内の某ファクトリーは、職人技でもってこれを解決し、当時のZ1オーナーはもちろん、自動車業界から刮目されたというエピソードも(残念ながら、このファクトリーは廃業しています)。
ドアなしでの走行はさぞかしスリリングかと思いきや、シートを固定するフロアがかなり深い位置にあるため、恐怖を感じるほどではありません。昔のジェットコースター的な開放具合、といったらイメージしやすいでしょうか。とはいえ、BMWはどんな手のまわし方で、世界一厳しいといわれるドイツの安全基準をくぐり抜けたのでしょう(笑)。
ちなみに、Z1の外装はドアパネルを含めてほとんどが合成樹脂でファスナー留め。ということは、異なるカラーのパネルを使って手軽にイメージチェンジができちゃうのです。それどころか、樹脂パネルは一切の応力を担うものではないため、全部外して骨組みだけで走行することも可能だそう。
このスケルトンでの走行は、さすがにドイツ行政も認めていないようです。