オデッセイ復活……の前に終了したことがあり得ない! ホンダがおかした3つの失敗とは (2/2ページ)

オデッセイの終了と復活で露呈したホンダの3つの失敗

 生産終了に至った問題点を具体的に挙げると、まずひとつ目として、「狭山工場を閉鎖するからオデッセイも終了する」という判断が理屈に合わない。車両が生産を終えるから、それに伴って工場を閉めるなら理解できるが、逆は成り立たない。工場はクルマを生産するために存在しており、工場があるからクルマを作っているわけではないのだ。

 ふたつ目の問題点は、オデッセイの売れ行きだ。「売れないから終了した」と思われているが、そんなことはない。オデッセイは生産を終える約1年前の2020年11月に、フロントマスクまで刷新する規模の大きな改良を実施して、2021年1〜6月の1カ月平均登録台数は約1800台、つまり前年同期の2倍以上も売れていたからだ。

 この販売実績は、ミニバンでは安定的に高い人気を得ているデリカD:5を上まわり、売れ筋価格帯が350〜450万円の高価格車では立派なものだ。そのために、販売店も「オデッセイは堅調に売られる唯一の高価格車だから、終了されては困る」と反対した。そもそも多額のコストを費やして規模の大きな改良を行い、売れ行きが上向いた半年後に国内販売を終了するのは、どう考えても判断を誤っている。

 3つ目の問題は、2022年にフルモデルチェンジを行ったステップワゴンに、スパーダプレミアムラインという最上級グレードを設定して、オデッセイからの乗り替えを狙ったことだ。スパーダプレミアムラインには、スエード調表皮のシート生地などが使われて装備も充実するが、開発者によると「オデッセイから乗り替えるお客様は、狙ったほど多くなかった」という。

 これも当然で、オデッセイは、トヨタのアルファードやヴェルファイアに相当するホンダの最上級ミニバンだ。ステップワゴンはノア&ヴォクシーと同様のミドルサイズだから、乗り替えればダウンサイジングになってしまう。日産もセレナにプロパイロット2.0などを搭載する最上級のe-POWERルキシオンを設定したが、設計の古くなったエルグランドからの乗り替えは少ない。オデッセイを終了して、そのユーザーをステップワゴンに引き継ぐ目論見も間違えていた。

 以上のようにオデッセイの終了と復活は、日本のユーザーと向き合わず、戦略も立てられず、商品を場当たり的に扱うために生じている。2022年におけるホンダの世界生産台数の内、日本国内の販売比率は15%だった。日本を軽視する根底には、海外市場への依存度が高まったことも影響している。


渡辺陽一郎 WATANABE YOICHIRO

カーライフ・ジャーナリスト/2024-2025日本カー・オブ・ザ・イヤー選考委員

愛車
フォルクスワーゲン・ポロ(2010年式)
趣味
13歳まで住んでいた関内駅近くの4階建てアパートでロケが行われた映画を集めること(夜霧よ今夜も有難う、霧笛が俺を呼んでいるなど)
好きな有名人
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