電光石火の変速を実現する6速セミオートマATを搭載
日本円で8850万円(輸送費などは別途必要)という価格からしてこのクルマをラリー競技車として使う人はいないだろうが、外板パーツをカーボンファイバー製としたことで車重は1200kg強に抑えられており、WRカー並みの軽さを実現。
気になるエンジンは400馬力オーバーに強化された2.5リッターターボを搭載するので、パワーウエイトレシオは約3kg。リストリクターで出力を抑えられたWRカーをも凌駕する動力性能を発揮する。
エンジンのシリンダーブロックはオリジナルながら、ピストンなど摺動部品は新開発の専用品だ。このパーツだけでも手に入れたいと望むマニアは少なくないはず。
エキゾーストはWRカーと同じく等長を採用。EJ型のエンジンで400馬力級の高出力を得るには等長の採用が必須となる。
ミッションはパドル付き6速セミAT。パワートレイン全体としては、市販車としての耐久性や扱いやすさと往年のWRカーらしさを巧みに両立したものと言えるだろう。
限定の25台は、発売と同時に完売となり、日本への上陸は危ぶまれたが、日本の販売窓口のアライモータースポーツは1台確保した模様だ。
ボディラインなど外観はWRカーを忠実に再現した一方、内装は前期型GC8に準じたもの。表皮はアルカンターラ素材、一部がカーボンパーツに変更されてはいるが、現地で実車を見た人の印象によると、8850万円という価格からすると寂しさが禁じ得ないという。
ロールケージやフルバケットシートなどはオプションになるというが、ある程度のオーダーメイドが可能とのこと。カーボン製ドアにGC8前期型用のパワーウインドウスイッチが巧みに流用されるところは泣ける。
注目は6速セミATの操作系で、プロトタイプではステアリングのパドルに加え、センターコンソール部分にダイヤルスイッチを配置。希望すればフロアシフトタイプも選べるという。
シーケンシャルギヤボックスのギヤチェンジに要する時間はわずか0.08秒と速く、やはりパワートレインのパフォーマンスは極めて高い。変速はオート的なモード選択も可能となっている。
メーター表示は今時のクルマらしく液晶で、計器類のほかさまざまな車両情報を表示。エンジンのレッドゾーンは8000rpmと高回転型だ。
あまりに高額な価格など賛否の声はあるが、SUBARUのWRC参戦黄金期を象徴する初代のWRカーを復刻するプロジェクトを当事者たるプロドライブが実現したことは純粋に素晴らしいと言えるし、有意義なことであるのは間違いない。
※本記事は雑誌SUBARU MAGAZINEの記事を再構成して掲載しております