ネガティブなイメージがあるが経営判断としては正しいと言える
ただし、系列から外すことは縁を切ることではない。
完成車メーカーとサプライヤーとしての取引にフォーカスしてみれば、個々の企業との資本関係が薄くなったといっても、ホンダへ部品を供給するという関係は基本的に変わっていないという見方もできる。
逆にホンダの立場でみれば、これまで厳しい時期には支える必要のあった系列のサプライヤーを整理・独立させることは、自動車の大変革期において身軽になることを意味する。
とくにホンダの四輪部門においては、利益率の低さが長年の課題となっている。そうして点を改善するにも系列のサプライヤーを整理することは有効な手段となるだろう。
一般ユーザー、ホンダ車オーナーにとって、系列のサプライヤーを整理することで気になるのは補修部品などの供給体制における不安だろう。とくに旧車の補修部品というのは、金型などを保管しておくコストを考えると、ビジネス的にはボランティアに近いという話もある。
もっとも、ホンダ車についてはそもそも旧車の部品供給について、特別なモデルを除くと充実しているとは言い難い、というのが一般的な評価だろう。系列再編によって部品供給体制が大きく悪化するということはないかもしれない。
それはさておき、ホンダが系列のサプライヤーを再編している背景には、脱エンジン戦略が関係しているという見方も多い。燃料タンクを主力品としている八千代工業の売却もそうした判断に基づくというのが定説だ。
ホンダの脱エンジンに対して、「すべてEVになるとは限らない」、「エンジン技術を失ってしまってはホンダではない」といった批判もある。なかには「創業者である本田宗一郎氏は脱エンジンを許すはずがない」といういう思い入れのある発言も見かける。
ただし、筆者の印象は違う。ホンダの拙速とも思えるZEVシフト戦略は、本田宗一郎氏のDNAを感じる部分もある。
かつて、本田宗一郎氏は「よい技術を出しても、時間というタイミングがずれれば技術はタダと同じである」といった発言をしたという。
状況が変わったのを見極めてから動くのではなく、他人よりスピーディに行動していくこと、すなわち「早い者勝ち」の精神がホンダに連綿と続くDNAだとすれば、ZEVシフトに向けた系列再編は、まさしくホンダらしい判断といえそうだ。