環境によって変化するのであくまで充電時間や容量は目安
続いて充電場所と費用ですが、普通充電器はおもに、自宅やホテル、ショッピングモールやレストラン、オフィスや行政施設(区役所等)といった、充電のために長時間、クルマを停めておくことができる場所に設置されています。
自宅であれば、住宅の電気代として合算で支払いができるため、太陽光発電などを活用すれば、電気代が抑えられる場合もあります。そのほかでは、「充電カード」の会員になることで月会費を支払うと通常よりも安い価格で充電できたり、クレジットカードやバーコードなどでその都度支払いをする方法などがあります。目安としては、多くの充電器で利用できる「e-Mobility Powerカード」を例にとると、月会費は普通充電の場合1540円(税込)。1分あたり3.85円で利用できます。都度払いの場合には、4〜8.8円/分程度が一般的です。
急速充電器は、高速道路のSAやPA、自動車メーカーの店舗、道の駅やコンビニといった、短時間で多くの充電を必要とする場所に設置してあります。たくさんのEVが利用しにくる場所のため、1台が長時間独占するのを防ぐため、またバッテリーの劣化をおさえる目的などのため、現在のところ1回の充電時間は30分までで、すみやかに次のEVに譲りましょうというルールがあります。先ほどの充電カードで急速充電(普通充電併用)のプランは、月会費が4180円(税込)。1分あたり27.5円で利用できます。都度払いの場合には、55〜77円/分程度となっています。
さて、気になる充電時間の目安ですが、これは理論上の時間の計算と、実際にバッテリーに入っていく電力は異なることが多いことを、まずは頭に入れておきましょう。充電器の出力の違いもその理由のひとつですが、さらに、バッテリーには充電に適した温度があり、それより低すぎても、高すぎても充電効率が悪くなります。たとえば真冬に外気温が0度以下の場合や、真夏に35度以上になるような猛暑日、また高速道路を長時間走行した直後、といったシーンはバッテリーにとってあまり良い状態とは言えません。そういうときには同じ30分でも、計算上の半分もバッテリーが充電されない、という可能性もあるのです。
またもうひとつ、バッテリーがどの程度の減り具合のところから充電をスタートしたか、ということも充電効率に影響します。とくにリチウムイオンバッテリーの場合にその傾向が強いですが、カラに近いところから8割くらいまでは、とんとん拍子に充電が進むのですが、8割くらいから満充電までは、充電速度が明らかに遅くなってきます。そのため、まだけっこう電池残量があるのに急速充電器につないでも、思ったほどは残量が増えない、ということも多いのです。
これらを頭に入れた上で、充電時間の目安を計算してみましょう。計算式は「バッテリー容量(kWh)÷充電器の出力(kW)=充電時間」。たとえばバッテリー容量20kWhのEVを0%から満充電まで、6kWの普通充電器で充電すると、答えは3.33時間ということで、3時間15分程度ということになります。
初期の頃のEVは、バッテリーの温度管理や充電効率といった研究やノウハウがまだあまり蓄積されていなかったため、年数が経過すると満充電にしても走行距離があまり稼げなくなってしまうようなケースもあったのですが、近年のEVはそうした研究が進み、さまざまな技術でメーカー独自のバッテリー温度管理や、劣化防止のための措置が取られていることが多くなりました。この先5年、10年と実績を積んでいく段階ではありますが、日進月歩でよくなっていくことと思います。使う側としても、そうしたバッテリーの特性を知り、なるべく負担にならない方法を考えながらEVを長持ちさせていくことが大切ですね。