世界のトヨタの水素マシンに挑むのは……なんとリジェ! かつてのF1名門チームの作るクルマってどんなもの? (2/2ページ)

往年の名車が水素燃料レーシングカーとしてル・マンに帰ってくる!?

 そんなエピソードを聞けばル・マンに向けたレーシングカーはJS2をオマージュしたくなる気持ちも大いに納得。ですが、ギ・リジェは2015年に没しており、晩年にリジェのブランド、およびJSの使用権をフランスのレーシングカーコンストラクター「オンローク・オートモーティブ」に売却しています。なので、JS2Rはここんちのオーナーにして、レーシングドライバーでもあるジャック・ニコレのアイディア。

 もちろん、彼も生粋のフランス人に決まってます。で、2018年にはオンロークから、リジェ・オートモーティブへと名称も変更し、名実ともにリジェのあとを継いだというわけ。

 ちなみに、オンロークはリジェと組む前は、これまたフランスの超有名ドライバー、アンリ・ペスカロロとコラボしており、彼の名を冠したル・マン・プロトタイプカーを作って参戦するなど、フランス・ナショナルチームと呼んでも差支えないほど。JS2Rの前にも5タイプのJSモデルを製作し、いずれもル・マンやプロトタイプカーレースにエントリーしています(そのわりに、モーガンや日産ともコラボするあたり、フランス人のしたたかさを感じずにはいられません)。

 そんなリジェ・オートモーティブですから、2026年の水素レギュレーションを見逃すはずがありません。ただし、トヨタでさえ慎重に開発をしている水素燃焼テクノロジーを、言ってもフランスの片田舎でモノにできるのかといったら、やっぱりダウト! そこで、ニコレは実業家の腕前を駆使して、ドイツの電機大手ボッシュとのパートナーシップを結んだのです。

 ドイツ側は水素燃焼エンジン、そして水素タンク(おそらく水素ガスで、トヨタが使っている液化水素までは追いついていない模様)や、レース環境に耐えうるセーフティ機構を担うということですから「だったら、リジェはなにやんの?」と思うのもごもっとも。

 平たくいえば、ボッシュが作った水素の仕組みを載っける車体(JS2R H2)を作ることとなりますが、そう簡単にいくものでもないでしょう。従来、ガソリンエンジンを積んでいたJS2Rはそれなりのダイナミックパフォーマンスを発揮していたようですが、ここに水素エンジンやタンク、あるいは冷却機構を追加するとなると、課題は山積みしているはず。

 公表されている情報によれば、重量増しに対応するべくそれまでの鋼管フレームから、カーボンモノコックに変更されたとのこと。また、JS2Rはミッドシップですから、安全機構を含めた水素タンクというバカでかいものをどうレイアウトするのかなど、興味は尽きません。

 こうなると、2026年のリジェ対トヨタの水素ガチンコ24時間レースというのが俄然楽しみになってきます。すでにトヨタは水素エンジンによるカローラで24時間レースを走り切っていますが、かたやフランス&ドイツのコラボチームの実力も侮りがたいもの。2023年と同様、あるいはもっと白熱したレースにぜひ期待しましょう!


石橋 寛 ISHIBASHI HIROSHI

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三菱パジェロミニ/ビューエルXB12R/KTM 690SMC
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