海外のCMキャッチコピーはライバル意識むき出し
「お隣のコロナより、うちのは、大きい」
日産サニーがコロナとガチンコだったころ「隣の車が小さく見えます」という有名なキャッチコピーがありました。それを知っていると、「お隣のコロナより……」というこのコピーは日産の挑発かのようにとれますが、さにあらず。じつは販売台数500台程度というマイナーなコロナ・スーパールーミー(1990)の宣伝文句で、ノーマルより210mmもストレッチされた車体はたしかにノーマルが小さく見えるほど。
それでも当時の5ナンバー枠に収められていて、一般家庭で使えるストレッチリムジンとして注目されるかと思いきや、前述のとおり500台ぽっきり。いまとなってはミニバンと差別化もできるし、悪くないパッケージ&キャッチコピーに思えるのですがどうでしょう。
「クワトロに乗っていないと……」
炎上覚悟のメーカー対決キャッチコピーは、なにも日本に限ったことではありません。むしろ、比較広告やら競合ディスり広告は海外のほうがより過激といえるでしょう。
たとえば、アウディのクワトロセダンがコーナーを駆け抜けていくわきで、コースアウトしてしまったBMWが救助されているという構図。ここに「クワトロに乗っていないと……」というキャッチコピーですからね、痛烈というかスマートというか、日本の宣伝担当者にはなかなか浮かばない発想かと。
もっとも、この構図も偶然にとられたショットなようで、あえてアウディが仕組んだものではないようです。ともあれ、BMWユーザーから大いに炎上したことは言うまでもないでしょう。
「Think small(小さく考えよう)」からの「Das Auto(このクルマ)」
最後はあまりにも有名なフォルクスワーゲンのコマーシャルで、ビートルがちんまりと映った広告(1959)に「Think……」とあり、当時アメリカのフルサイズ文化に真っ向から挑戦したコピー。これはいくつか広告賞を受賞するなど社会的にも認められ、炎上どころかビートルの売り上げを大いに伸ばした功労賞もの。
ですが、時が下って2008年、フォルクスワーゲンは英語圏でのコマーシャルにあえてドイツ語で「Das Auto」と打ち出したものの、これが評判悪いのなんの。いわく「ドイツの悪しき帝国主義が垣間見える」と消費者団体から猛反発。そのうえ、2015年にはディーゼルゲートによるデータ改ざん報道で同社の評判はがた落ち。そのころ、SNSではThink smallが揶揄されまくって、フォルクスワーゲンはまさに炎上し、株価は急降下。
いやはや、キャッチコピーって面白いけど、ムズかしいものだと痛感することしきりです!