得意技はウイリー走行なリトルデッドワゴン
マテルのホットウィールといえば、A100のもう一台のレジェンドカスタム「リトル・レッド・ワゴン」もミニチュアカーで1・2を争う人気モデル。実車のほうはといえば、これまたドラッグレース界の伝説的な英雄、いいかえればこれほどアホアホなマシンもありません。なんとなれば、ピックアップにもかかわらず、ウィリー走行でギネス記録まで樹立してしまったのですから。
例によって、ことの起こりはドラッグレースでのプロモーションに熱心だったクライスラーがA100をエントリーさせたことがスタート。当初はウィリー走行が目的ではなかったようですが、積んだエンジンが426Hemi ビッグブロックV8となれば話は別。ちょっと後輪荷重にしただけで容易にフロントアップするどころか、どこへ向かっていくかわからないほどのじゃじゃ馬だったとのこと。
このビックリマシンは、当時のスーパーストックカーのチャンピオン、ビル・ゴールデン、通称マーベリックの手にゆだねられることに。もちろん、トルクフライトのミッションとともにエンジンは後方、荷台部分へと移動され、よりトラクションを得られるようカスタムされたほか、荷台下にはスペースフレームが組まれて強大なパワーを受け止める工夫もなされていました。
ドラッグレースのデフォとして、30%のニトロ注入がなされると「前輪が空に向けて発射する」感覚だったとのこと。一度でも、リトル・デッド・ワゴンのスタートを見たことがあれば、それが誇張でもなんでもないことがわかるはず。
1965年、デビュー戦のロングビーチで、マーベリックは1/4マイルを11秒フラットで走破! 到達スピードは120mph(約193km/h)という記録で、しかもウィリー(笑)。ちなみに、マーベリックはウイリー走行中でも正確に操作できるようブレーキなどもカスタムしていたそうです。
とはいえ、やっぱり無茶がたたったのか、数度のクラッシュを起こしたマーベリックはレースシーンからは引退を余儀なくされてしまいました。以後はショービズに徹したかと思いきや、1977年にはギネスに挑戦。1289メートルの距離をウィリーで走破するという偉業なんだかアホなんだかわからないほどの記録をマークしたのでした。
で、こちらもオークションで55万ドル(およそ8000万円)という驚きの高値で落札。もちろん、購入者はアメリカ人のドラッグレース愛好家だったそうです。
それにしても、A100ほどアメリカ人に愛されたバンはないでしょう。アホアホな魅力が受け入れられるという国民性、じつに羨ましいもの。願わくば、日本のカスタムシーンも、A100よりもっとアホアホで、一層カッコよくなってほしいものです。