この記事をまとめると
■エンジン車は個体によってパフォーマンスが異なる
■電気自動車の最高出力にも個体差はあるのか?
■アクセル全開での出力はほぼ同一だと考えられる
EVのバッテリーやモーターは余力を残している
最近は聞かなくなった印象もあるが、昭和のクルマ好きの間では「当たりのエンジン」という表現があった。同じ車種、同じエンジンなのに、明らかに速い個体があると、「このクルマ(エンジン)は当たりだね」という言い方もされたものだ。メーカーのカタログ値は同じ数値であっても、パワーチェックをすると、最高出力などの数値が有意に異なるのは半ば常識ともいえた。
はたして、現在のEV(電気自動車)においても、そうした個体差はあり得るのだろうか。
前提として工業製品である限り、公差(機械部品における寸法の許容範囲)は存在する。そのため厳密には同じ寸法・精度で組み合げられていることはない、といえる。
エンジンの場合、公差の要素としてピストンなどの部品精度が含まれるため、クリアランスの大小によって当たりのエンジンが生まれることもあれば、逆にハズレのエンジンとなってしまうこともあった。EVにおいても公差ゼロで組み上げられていないわけで、当たりハズレはあり得る。
ただし、それが最高出力に影響するかといえば、数値としては大差がない可能性もおおいにあり得るのがEVだ。
ローラーを回すタイプのパワーチェック機器を使った場合、タイヤをまわす力に影響するのはバッテリー出力・インバーターなどのロス、モーター自体の出力、ディファレンシャルなどギヤまわりでのロス……などが考えられる。これらの電気的、機械的な損失は個体差が関係してくるため、アクセル全開=システムが発生できる最高出力であれば、EVにおいても当たりハズレはあるはずだ。
しかしながら、出力制御の考え方を整理すると「表向きの個体差は、ほとんどない」といえるのもEVの世界だ。
とくに実用クラスのEVにおいていえることだが、最高出力の数値に対してバッテリーやモーターの余力が大きい傾向にある。カタログには掲載されていないモーターのポテンシャル(潜在能力)を調べると、カタログスペックに対して3割以上も余力を残していることもある。