2.4リッターのトルクも相まってACC制御はスムース
2023年秋にマイナーチェンジを実施するBRZのMT車にアイサイトが搭載されることが明らかとなったのだ。前述したようにMT車でAEBSを作動させたときの課題は、エンストしてしまうことだ。現在の乗用車ではエンストしてしまうと、自ずとブレーキの負圧を失ってしまう。その状態で停止を維持することは難しいのだが、VDC(ブレーキ制御による車両安定機能)を利用して、3秒位程度はブレーキの効いた状態を維持することでエンスト時の課題を解決したという。
結果としてAEBSによる衝突回避・被害軽減効果ついてはAT車のアイサイトと同等の機能を有することになったという。交通事故を減らすことがアイサイトに代表されるADAS(先進運転支援システム)に期待される役割であることを思うと、遅まきながらではあるがスバルがMT用アイサイトをリリースすることの意味は大きい。
また、アイサイトといえば高精度なACCによる高速道路での運転支援・疲労軽減についても知られているところ。AEBSは万が一をフォローする機能だが、ACCは高速道路走行時にはつねに恩恵を受けられるものだけに、アイサイトの価値として認めているユーザーも多いはずだ。
ただし、MT車でACCを利用するときの課題は、速度に応じて適切なシフトチェンジ操作を“ドライバーが行う必要がある”こと。AT車では先行車と適切な車間距離を維持するための加減速コントロールをクルマ任せにできるが、MTではそういうわけにはいかない。
ただし、現行BRZにおいてはエンジンが2.4リッターと、従来モデルより排気量アップしている。排気量の余裕はトルクフルな特性につながるものだ。BRZのMT用アイサイトにおいては、そうしたパワートレインの余裕を活かして、せわしなくシフト操作せずとも追従できるように仕上げているという。
また、高速道路での車線逸脱警報やふらつき警報といった機能はAT車と同様の仕上がりになっているとのこと。ただし、そもそもBRZにおいては車線中央維持のステアリングアシスト機構はついていないので、MT用アイサイトでもステアリング操作は100%ドライバーが担う必要があるという。
そのほか、市街地の信号待ちにおける先行車発進お知らせ機能は、AT車と同様にMT用アイサイトにも搭載されている。
ただし、MTではアクセルとブレーキのペダル踏み間違いは起きづらいということで、踏み間違えによる誤発信抑制に関する機能は搭載されていない。
なお、AT車では後退時に障害物を検知すると、衝突回避・被害軽減につながるブレーキ制御機能を持つが、MT用アイサイトではソナーを利用したワーニングに留めているという。
このように駐車時のアクシデント・インシデントについての機能を省いているのはMT車ではそうした事故が起きづらいためである。けっしてMT用アイサイトが低機能というわけではないので、誤解しないようにしたい。