天国か地獄かかかった時間は14時間! 東京ー大阪間500km超のEVロングランにWEB CARTOP編集部員が挑戦してみた (3/4ページ)

高速道路なのに各駅停車! 一体何時間で到着するのか

 さて、こうしたありのままを伝えるツーリングで重要になるのは、走行条件だ。そこで自分達で決めたルールを紹介したい。

EVキャノンボールの基本ルール

①ドライブモードはもっとも電費のいいECO等を基本とし、ドライバーが試したい場合はモード変更も可能

②基本全車が連なって走行する

③各車の総走行時間を測るためにスタートから目的地の大阪着までストップウォッチで計測

④航続距離をみつつ充電の必要な場合はSA・PA等で充電のために停車

⑤停車時は全車連なって走っているために同時にSA・PAに停まるが、総走行時間を測定するために充電する車両以外はストップウォッチを止める

⑥ドライバー4名(+カメラマン1名が同行)は充電での停車ごとにドライブするクルマを乗り替える(ドライバー1名は休憩)

⑦停車は何かない限りは充電時のみとし、休憩や昼食もその時間でとる

⑧走行状況は交通の流れに沿って走り、基本は空いている限り制限速度いっぱいで走る

⑨アクティブクルーズコントロールはドライバーの好みで使用可

 私はまず、ソルテラの助手席に座り、ほかの3名が運転して出発する。これは編集長特権で助手席にてゆっくり朝ごはんのコンビニおにぎりを……なんていうステキな話ではない。集合時には目が数字の「3」のように眠たげだったスタッフ達が、クルマを見た瞬間にまるで新しいオモチャを開封した子どものように覚醒し、運転席を取り合ったためだ。

「EVにシッカリと乗るのは初めてで……」とは、生粋のスバリスト、編集部の紅一点、ひかぴ(乾)だ。というわけでソルテラの助手席に乗る。運転から離れてじっくりと観察すると、やっぱりEVはスムースだ。音が静かなことに加え、シームレスな加速で東京の都市部では至極快適。信号のストップ&ゴーはもちろん、ちょっと加速して隙間へと車線変更なんていうシーンも、変速も、エンジンのようなトルクが盛り上がるまでのラグもないので、安心感も高い。ゴミゴミとした街中を抜け、そのまま首都高へと突入し、東名高速を目指す。

 継ぎ目が多く荒れた路面、さらにコーナーが多い首都高だが、同クラスのエンジン車やハイブリッド車に比べて走りはシットリと落ち着いている印象がある。これは、間違いなく高級車の部類のiXはもちろん、ソルテラ、さらにはサクラでも同様。車重はヘビー級だけれど、重いバッテリーを低い位置に積んでいるために重心センターが低い。その効果は、コーナーでの落ち着きや、荒れた路面でもクルマがハネにくいなどの効果として現れる。もちろんそれに合わせてメーカーがシッカリと足まわりを作り込んでいるからだけれど、いいじゃないかEV!

 一方でやっぱり電欠が不安で、常にメーターが気になる。このあたりは、EVに比べればどこでも給油のできる内燃機関車に長年乗ってきた人間にとっては仕方のないことか? とくに航続距離の短いサクラのトップバッターは新人のせいけっけ(清家)なだけに、見落として電欠なんて心配もある。

 だが無線でやりとりすると、大卒間もない新人とは思えないほど、驚くほどの落ち着きっぷりで、的確に残り航続距離を伝えてくる。ナビ画面でSA・PAの距離を確認し、足柄SAで最初の充電をすることにした。到着時の残り航続距離は33kmで、ここまで出発から約100kmを走行。「大阪まで500kmでしょ? 意外に余裕なんじゃない?」「むしろSAでのお土産屋巡りなんてできて楽しいかもね!」なんて、スタッフたちからはのんきな声が上がっている。会議のときと同様、やはり悟りきったような表情で無言なのは副編集長のフジタだ。

 充電の間にトイレも済ませて出発! だが、30分の急速充電を済ませたサクラのメーターを確認すると、航続距離は84%充電で116kmしかない! 「次も100kmぐらい行っちゃいますか」なんて声には反論せず。EVのなんたるかを実体験してもらおうじゃないか!

 東名から新東名へと進み、サクラの航続距離と相談しつつ静岡SAで2回目の充電。「何か面白いものありますかね〜、充電時間も有効活用しないと!」まだ皆元気だ。30分の充電時間を持て余すことなく、EV談義にSA・PAグルメ散策などで時間を潰す。

 さて、充電ごとに、順番に運転するクルマを替えることにしたこのツーリング。ここからは私がサクラのステアリングを握る番だ。静岡SAを出発するときの航続距離は113kmと出ている。まぁ実際に走れる距離はこの8割と考え、15〜20km残しで入るとしても80kmぐらいは走れるか……なんて頭の中で計算してスタート。だが、ここでEVの恐ろしさが牙を剥いた。

 ルールで、安全で道が空いていれば制限速度いっぱいで走ると決めていたため、新東名では120km/hで走ったのだが……ん? 恐ろしいほどの勢いで残り航続距離が減っていくじゃないか! キロポスト表示と見比べると、4〜5つのポスト(つまり400〜500m)を過ぎると1km航続距離が減っていくような印象だ!! もうガソリン車なら「燃料タンクに穴空いた!?」感のある減り方だ。バッテリーに穴が空いてももちろん電気は漏れないだろうが……。もうナビの「ここまでなら行ける」表示など参考にならない。これじゃ本気で電欠する! 「ペース落とそう! 出しても100キロっ!」無線で叫ぶ。このあと聞いたところ、iXやソルテラも同様に、120km/h巡航では航続距離の減り具合は早くなるもののサクラほどではないようだ。

 というわけで60kmも進まないうちに浜松SAで再び充電。ソルテラも残り航続距離100kmを切ったのでここで2台を順番に充電することにして、その1時間でランチを取ることにした。「いや〜充電時間も有意義に過ごせますね!」「どうせ充電待ちだからじっくり味わえるのもいいよね」。うん、そのとおり! だがな、日本人は1日3食、もう2食を食べ終えているのだよ……と、心のなかで呟くが声には出さない。ふと目の合ったフジタだけが「わかってますよ」と目で答えてくれた。


石田貴臣 ISHIDA TAKAOMI

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趣味
読書(ミステリーが主)、TVでのサッカー観戦(バルサ/PSG/アルゼンチン代表/UCL全般)、映画鑑賞
好きな有名人
リオネル・メッシ、アラン・プロスト、綾辻行人、有栖川有栖、田中 瞳

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